柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「創一、今夜紹介したい人がいるんだ」
顔を少しだけ赤くして、照れたように笑う父さんを見て僕は心底驚いた。いつだって自分の好きなようにやって仕事でたまに迷惑をかけている父さんが、こうも改めて僕に言う事があるなんて。
父さんは自分勝手ではあるけど、異性関係はしっかりとした線引きをしていた。女性の知人友人は多くても、愛人を見た事は無いし噂ですら上がった事が無い。隠すのは上手な人でもあるけど、父さんは母さんを深く愛している、というのは分かっていた。
独り身になり、僕も成人となった今では誰かとまた共に暮らすのも……と思っていたけど、押し付けるものでもなかったので何も言わなかったから、父さんから切り出されて本当に驚いた。
「いつから付き合っていたの?」
「1か月前からだ」
「……意外と早い紹介だね。でも気づかなかったよ」
「まぁ互いに仕事優先にしていたからな。気づかないのも無理ないさ」
今夜頼むな、と言って父さんは足早に立会へと向かった。僕は残された書類と時計を確認して、後ろに待機している棟耶さんに声をかける。手帳に何か書きこんでいた。
「棟耶さん」
「スケジュールを変更しましたので問題ありません。今夜の連絡は緊急性の無いものでしたら私の方で対処します」
「ありがとう。ねぇ、棟耶さんは知っていた?父さんの恋人」
「いえ。まさか撻器様……切間立会人に恋仲の女性がいるとは思っていませんでした」
「僕もだよ」
紹介したい……と言う事は、結婚する気があるのかもしれない。僕も子供じゃないから父さんは父さんで好きなようにすればいいのに、と思ったけど、父さんが好きになったと言う女性は気になった。
「匠、遅くなってしまってすまない。創一、今付き合っている真鍋匠だ」
「こんにちは」
「…………こんにちは」
せっかくなら食事も共に、と連れられてやってきた料亭には、父さんより一回り、僕よりは年上ではあろう男性が、正座をして僕達を見上げていた。顔は女性的……なんてことはなく、男性として美形で、なぜか左目の下に頬毛が生えている。スーツ姿のその人の手には卵の殻が握られていた。
「今日はここで食事って言っただろ~?卵は駄目だ駄目!!」
「私はこれが好きなんだ。それに、たまたま近くにいたから先に入ったが、料亭で食事するとは聞いていない。家で話そうと言ったのは撻器だろ」
「だって家だとお前緊張しちゃうだろ」
「緊張するか。そもそもお前は自分勝手すぎだ」
仲良さそうに喧嘩する2人に置いてかれた気もするが、匠さんと先に目が合うと「すまない」、と小さく頭を下げた。
「いえ。父さんがいつもお世話になっているようで……」
「普段はそんな会う機会が無いのでそれほどでも」
「そうですか」
「まぁまぁ、話なら食事をしながらでもできるだろ」
どっかりと悪びれもなくあぐらで座る父さんに、僕と真鍋さんは顔を見合わせ、ため息を吐いた。
真鍋さんは密葬課課長。賭郎とは内通者があるものの、敵対関係である警察の人間だ。そんな人と何故付き合っているのかはとても気になるところだ。聞いてみれば「殺し合いをして惚れた」と普通の人が聞けば全く理解できない理由を答えた。真鍋さんに聞けば「あまりにもしつこいので仕方が無しに付き合った」とそっけなく答えていた。でも耳が赤くなっていたのが見えた。
「父さんと真鍋さんは同棲する予定は?」
「もちろんあ……「互いの事を考えると同棲の予定はない」
「何でだ!?俺はお前と一緒に暮らしたい!!」
「簡単にできない立場なのを分かっているのか?」
「創一からも何か言ってやれ!!……と、すまない」
スーツから携帯を取り出してその相手を確認する。無視するのかと思ったけど
「すまない、少し席を外す」
と言って出て行ってしまった。僕と真鍋さん、初対面の2人だけになるとは。何を話そうか、と思っていたら意外にも真鍋さんの方から口を開いた。
「安心してくれ」
「何が?」
「撻器との交際について。同棲は絶対にしない」
「……その事は父さんも?」
「撻器にはまだ話していない。……私が男であること、密葬課に身を置いている事は、撻器にとって重荷になる」
「真鍋さん……」
「それに、同棲を考えると……あの男に家でも振り回されるのはさすがに疲れる」
「あぁなるほど」
父さんには申し訳ないけど、ものすごく納得できた。
「悪い、少し長引いてしまった」
「いや……。撻器、話がある」
「ん?どうした匠?」
「お前とは……「真鍋さんもう少しだけ同棲に関しては考えたいって」……えっ?」
「考えてくれていたのか!!そうだな、一か月ではまだ早過ぎた。もう少し互いを知る必要があるもんな」
「おい、創一君」
「それと、父さんの事大好きだから迷惑かけている気がして不安だって。父さんも好きならそんな不安にさせるような事しちゃダメだよ」
「そ、そうだったのか……悪かった!!不安にさせていたのにすぐ気づかななくて」
「そうそう。本人の口からじゃなくて、相談された僕の口から言わせるんじゃぁ父さんもまだまだだね」
「いやだから……」
「今度から何か相談があるなら乗るからね」
「……人の話を聞かないで先に進めるのは、親子揃って似ているな」
「?」
「まぁこれから長い付き合いなんだから、よろしくね真鍋さん」
「君には色々相談する羽目になりそうだ」
父さん相手じゃ仕方がない。まぁでも、楽しくなりそうだしいいか。
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