柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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真紅に彩られた唇を鏡で見つめる。雪のように白い肌にその赤は映えており、そっと自分の唇をなぞった。
「気に入ったかい?」
背後で男が貘の肩に手を置き、問いかけた。貘は振り返らない。
似合っているとは自分でも思う。これで黒髪だったらまるで白雪姫だったかもしれない、とも馬鹿らしいことも思うが
(あーあ)
少しだけ気持ちが冷めている自分に苦笑した。
「……何で口紅塗ってんだよ」
「んー?」
男と別れた直後、伽羅に連絡を入れて迎えに来てもらって第一声がそれだった。
助手席に乗り、伽羅の運転する車に揺られる。
「さっき会っていた人にプレゼントされたー。似合うから君へ、だってさ」
そう言って口紅を取り出す。伽羅は横目でチラリと見ると、そのまま何も言わず運転を続けていた。そんな伽羅の反応に特に何も言わず、貘は手の中でそれをもてあそぶ。
高級ブランドであるそれは発色はもちろん、その見た目も美しいものだ。
「似合う?」
「似合わねぇな」
間髪入れずに答える。その反応を予想していたのか、貘は困ったようにくくく、と笑う。
「そんなきっぱり言わなくてもいいじゃん。とても似合っているよ、って言われたんだよー?」
「俺にそう言って欲しいのか?」
「……ううん。正直な感想を言ってくれている方がいい」
予想通りの反応で嬉しい反面、ちょっとだけ残念な気持ちになる。無言になった車内に少しの息苦しさを覚えるが、
「俺に似合うって言ってくれたけどさ、あの人俺に何を求めていたんだと思う?」
「知るか」
「まぁ伽羅さんには貢ぐような男の気持ちなんてこれっぽっちも分かるわけないか。俺の身体目当てだったと思うんだよねー」
自分を見る目が欲望丸出しでいたのを思い出し、わざとらしくうぇ、と舌を出す。見た目もその立ち振る舞いも悪くなかったが、隠しきれない欲望をああも見えてしまうと貘としてもやる気を削がれてしまうのだ。
「口紅を塗ったおかげで俺の魅力が増えちゃったのかな?」
「……」
「どう伽羅さん?いつもよりは色っぽい?」
赤信号で止まった車内で、貘が伽羅の腿へと手を載せ、扇情的な表情で首を傾げる。赤くそまった唇から、同じように赤い舌をチロリと出すと、伽羅は貘の後頭部を掴み、自分の顔へと近づける。
「二度も言わせんな。似合わねぇ。んなのつけた男に興味持つか」
「ちぇー」
「それに」
太い親指が乱暴に口紅を拭う。赤く染められたそれが取れた下には、少し色素の薄い本来の唇が現れる。
「てめぇはそんなもんで着飾る必要はねぇだろうが」
「……伽羅さんが珍しくデレてくれたね」
「バカか」
口紅のついた親指をティッシュで拭うと、いつのまにか青に変わった信号を進む。
「ねー伽羅さん。家に帰ったらセックスしようよ」
「あぁ?」
「着飾っている俺がいいって言われちゃって萎えていたけど、伽羅さんのお陰で欲求復活しちゃった。責任とってよね」
「知るか」
「楽しみだなぁ」
その前に、と貰った口紅をどうしてやろうかと考える。
「俺あれやってみたかったんだよね。鏡に口紅で落書きするの」
「……高級品でやるなんてバカか」
「似合わないって言われたのをつけたって伽羅さん喜ばないじゃん。使わないよりは有効的な使い方だよ」
その後あぁでも、と少し考え直す。
「伽羅さんに拭って貰う為に触れられるのも嬉しいから、普通に使うのも悪くないかも」
「バカか」
「何度もバカバカ言わないでよー!!」
素の自分を愛してくれる隣の男に、着飾らない唇を押し付けた。
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