柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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常に隙を見せない彼にしては珍しく、体をソファに預けているその姿に貘は珍しい事もあるもんだ、と見つめていた。いつもであれば不機嫌そうに「何だ?」と問いかけてくるだろうが、今はぼんやりとローテーブルにある酒瓶を見つめているようだ。
別に何も約束をしていたわけではない、ただ何となく気まぐれで彼と話したいと思い、伽羅のいる隣室へと向かった。自分の専属である以上、伽羅からも何も言われていなければ部屋にいるはずだ。
一応ノックをしてみると反応がない。首を傾げてもう一度ノックしてみるが、やはり反応は無かった。
「伽羅さーん。いるでしょ?」
声をかけてみても返事がない。不思議に思いながらドアノブに手をかけてみると……開いた。伽羅に限ってこんな不用心な事をするのか、と少しばかり警戒しながら、ゆっくりと部屋の奥へと進む。
「……伽羅さん、伽羅さん?」
リビングに当たる場所の、中央に設置されているソファ、そこにもたれかかっている伽羅の姿があった。心配して駆け寄ると、アルコールの香りが鼻をかすめた。ローテーブルを見れば2本ほど開けられたであろう酒瓶が転がっていた。
しばらく様子を眺めていると、その視線に気づいたのか、伽羅の顔がゆっくりと上がり、貘を見つめる。浅黒い肌に少し赤みがさしており、目も心なしかとろけているように見える。
「……嘘喰いか?」
「そうだよ……って、どうしたのさ?」
「酒、もらった」
「そうなんだ」
完全に酔っている、と確信しつつ、その姿を見て楽しむ。思えば伽羅とは酒を飲んだことがなく、強い方だと思い込んでいた。だからこそこんな風に酔うとは今まで思いもしなかった。
「水でも飲む?」
「……いらねぇ」
「でも伽羅さん酔っているでしょ?少し酔い醒ましした方がいいよ」
「酔ってねぇよ」
「今の今まで俺に気づかなかった時点で酔っているよー」
このままだとソファで眠ってしまいそうな伽羅を、自分では肩を貸してベッドまで運ぶ体力も筋力もない。ならば水でも飲ませて自力で動いてもらおうと思ったが、どうも水を飲んでくれる様子も、動いてくれる様子もない。
「おい、嘘喰い」
「ん?」
「こっち来い」
「何?」
一応冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してきて、伽羅の元へと向かう。
「遅い」
「水を取りに行ったんだよ。ほら、ちょっと飲んで……」
酔いを醒まそうよ、と言いかけた言葉は、伽羅が自分を抱きしめてきたことにより喉の奥へと留まってしまった。そのままソファへと押し倒される。持っていたペットボトルが手から滑り落ち、足触りのよいカーペットの上へと音もなく転がった。
「きゃ、伽羅さん?」
「……ねみぃ」
「ならベッドで寝ようよ。ほら、移動しよう?」
「……」
「…………伽羅さん?」
声をかけてみるが、返事の代わりに寝息が聞こえてきた。寝てしまっている、という事実に貘は驚き、どうするべきか悩んだ。体重差を考えれば押しのける事は不可能だ。
「抱きついて寝るなんて、子供みたい」
のしかかられているようなその体勢に息苦しさを感じるが、熱い体温とアルコールの中に混じっている彼の香りを吸い込むと、このままでも悪くないかな、とそんな考えがよぎる。普段触れない癖の強い黒髪を撫でてみると、気持ちいのかそれともくすぐったいのか、貘の首筋へと顔をうずめてきてくすぐったさを感じた。
こんな最強の立会人の姿を見れるのは自分だけだろう、と貘は満足げに笑って自分も目を閉じた。
「……おい、何でテメェがここで寝ているんだ?」
「伽羅さん昨日の事覚えてないの?」
「……?」
「……まぁ、いいか」
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