柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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寒くなってきたな、と吐く息が白くなったのを見て長は思う。
よく周りを見ればクリスマスの準備が始まっており、自分には関係ないことだな、と見向きもせずに歩き続ける。
帰って早く暖をとりたい気持ちが強いのか、その歩調は普段よりも速い。
家に着くと、リビングの灯りがついていた。
誰が入ったのか分かる、これで何度目の鍵交換になるんだ。
鍵を開け、リビングに向かうと
「お帰り、長。ミカン食べよう」
いつの間にか用意したらしい炬燵に入っている撻器が、笑顔で出迎えた。
長は返事せずに、丸めた冊子で撻器の頭を叩いた。
直前に避けたせいか、思った以上のダメージを受けた様子がない。
まともに直撃していたら脳震盪を起こす危険性があるが。
「痛いぞ」
「何を勝手なことをしている。だいたい、それはどこから持ってきた?そして置いてあったものはどこにした?」
「俺の家から持ってきたんだ!!前のものはきちんと保管しているから安心しろ」
「今すぐ元に戻せ。勝手に人の家具を入れ替えるな」
「これからの時期は寒いからいいだろ。ほら、長も入れ」
手を引っ張られたせいで強制的に体勢を崩され、そのまま炬燵の中へと入れられる。
冷え切った体には少し暑く感じたが、確かにこれからの時期にはちょうどいい。
「どうだ?いいものだろ?」
「確かにな」
「ミカンも食おう。ほら、甘くて美味いぞ」
「1ついただく」
「1つとは言わず、いっぱい食え」
「確かに2人で消費するのにはおかしい数があるな」
炬燵の中央に置かれているミカンは、何故か山盛りに積まれている。
傷む前に食いきれるのか?と撻器を見ると、すでに何個かの皮が置いてあり、自分が来る前にも食べていたようだ。
1つ手に取り食べてみると、程よい酸味と甘みが疲れた身に染みわたる。
帰ってすぐに暖をとれたことに感謝したいが、言えば撻器が調子に乗る、しかしこのまま黙っているのも礼儀に反する。
「どうしたそんな難しい顔をして?」
「……とりあえず着替えてくる」
「あぁ、スーツのままだったな。すぐに戻ってこいよ」
「ついでに何か作ってやる」
「……ホビロン以外で頼む」
「お前にホビロンをやるわけないだろ」
部屋着に着替え、冷蔵庫の中にある物を見てみると冷凍うどんと野菜が入っていた。
慣れた手つきで調理すると、敷物も用意してリビングへと運ぶ。
「いい匂いだな。何だ?」
「鍋焼きうどんだ。零すなよ」
「お、美味そうだ!!いただきます」
美味そうに食べている撻器の横で、長は傷む前にとミカンを黙々と食べる。
「長は食べないのか?」
「ミカンの消費が先だ」
「ぐはっ、そんなすぐには腐らないだろ」
「私が帰ってこれる日が少ないのを知っているだろう。それと勝手に中に入るな」
「許可もらえばいいのか?」
「……許可したらの話だが」
「分かった、今度からは連絡を入れる」
しばらくすればまた勝手に入ってくるんだろうな、と4個目のミカンに取り掛かる。
それでもまだ減る気配のないミカンだが、何日も続ければ無くなるだろう、と手の中で転がした。
「こうやってのんびりと炬燵に入っているのも悪くないだろ?」
食べ終えた撻器の問いかけに、長は素直に頷く。
普段はこうして落ち着ける時間が少ないだけに、睡魔も押し寄せてきた。
「……寝てくる」
「炬燵で寝ればいいだろ」
「起きた時の倦怠感があるだろ……。土鍋は流しに置いといてくれ」
「分かった。なぁ、長」
「何だ?私は眠いんだ」
「クリスマスとか大晦日とか、できたら予定を空けといてくれないか?一緒に炬燵で過ごそう」
珍しく真剣に、緊張した面持ちで聞いてきた撻器に吹き出しそうになるのをこらえる。
「そんな事で真剣になれるとはおめでたい奴だな。仕事がどうなるのか分からないが、善処しておく」
「よし、約束だからな!!」
「できたらな、の話なのを忘れるなよ」
ベッドに倒れ込むと、火照った体にシーツの冷たさが心地よく感じる。
「……まさかあいつ、炬燵で寝る気じゃないだろうな……?」
客室代わりになっている部屋を一応準備してやろうと体を起こそうとするが、体が怠い。
起き上がる気力もなく、朝一で水を渡す羽目になるだろうな、と思いながら目を閉じた。
次の日
「……怠い」
「炬燵で寝るからだバカ」
と、予想通りだるそうにしている撻器を見て、長は呆れながら水を渡した。
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