柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
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よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「明けましておめでとうございます」
「…………あ、あぁおめでとう。今年もよろしく」
日付が変わり元旦になった時の事。
撻器の家のチャイムが鳴り、こんな時間に賭郎関係者が挨拶に来たのか?とモニターを確認しないでドアを明けてみると、長が立っていた。
まさかの来訪者に目を丸くさせるが、直接新年の挨拶に来てくれたのだと思うと嬉しくなった。
「しかしどうした?飲みの誘いか?」
長の手には酒とつまみが入っているコンビニ袋、もう片方の手には普通のバックが握られている。
しかし首を横に振ると
「これは土産代わりだ。切間、書初めをするぞ」
「書初め?」
前から唐突な奴だとは思っていたが、何で書初め?と撻器は首をかしげた。
とりあえず寒いからと中に案内させ、こたつに一緒に入るとここに来て書初めをしようと言った経緯を聞いてみる。
「密葬課で新年の抱負を書こう、となったんだ。それを壁に飾る予定になったんだ」
「ぐはっ、珍しいな。賭郎でもやろうかな」
「賭郎だと人数が多すぎて大変じゃないのか?」
「それはあるな。立会人だけでも101人はいる」
「私達密葬課も人数は多いのは多いが。……話がそれたな。それで、いざ書こうと思ったのだが、なかなか思いつかなくてな……」
「そういうものだろうな。で、俺の家に来た理由は?」
「お前なら何かいい言葉が思いつくんじゃないのか、と思ってな。本当なら自分で考えた言葉がいいと思うんだが……」
「俺の言葉で参考になればいいんだが。長はどんな1年にしたいんだ?」
撻器に聞かれ、長は少し考える。
「そうだな……秩序を守る1年にしたい」
「ぐはぁ!!いつも通りだな。そうなると《秩序》って字はどうだ?」
「そうしたかったんだが、半紙ではなく条幅紙なんだ。2文字だけだとバランスがおかしくなりそうだ」
「なるほど……半紙に変えるのは?」
「いいとは思うが、せっかく鷹さんが用意してくれたのに使わないのも申し訳ない」
「長は義理堅い男だなぁ。他には何かあるか?」
「…………ホビロン」
「それは……多分抱負としては書けないな」
「私もそう思った」
秩序を守る1年、それにふさわしい言葉とは何かと2人で考える。
「……不撓不屈、なんてどうだ?」
「どんな困難に出会ってもけっして心がくじけないこと、という意味のものだったか?」
「あぁ。秩序を守る決意、みたいな感じでいいと思うが……」
「いい言葉だ。それにしよう」
「条幅紙は何枚あるんだ?」
「5枚だ。撻器も何か書くか?」
「長の新年の抱負用にもらったものだろ?俺は大丈夫」
「そうか」
そう言ってバックの中に入れていた道具を取り出し、すぐに並べた。
少し条幅紙を眺めてバランスを考えたのか、墨汁を入れ、墨をすり始める。
「墨から作らないのか」
「手間がかかる上に長居したら迷惑になるだろうからな」
「長ならいつだって大歓迎なんだが」
「そうか」
筆に墨を含ませると、そのままゆっくりと一筆一筆丁寧に書いていく。
とめ、はね、はらいをしっかり意識した、キレイな字ができていき、書き上げたものを別に用意していた下敷きの上に乗せ、また新しく書きはじめる。
少しだけ意識しているのか、最初に書いたものと書式が違う。
「上手いな。習っていたのか?」
「少しだけ習っていた」
そう言って5枚全部書き終えると、どれにするのか眺めていた。
それぞれ意識して書体が違うが、バランスよく書かれておりどれを選んでも問題なさそうだ。
「切間はどれがいい?」
「俺か?俺は……これがいいな。流れるように書かれていて好きだ」
「そうか」
そう言うと、撻器が選んだものに名前を入れるために文鎮を置く。
「いいのか?」
「お前が気に入ったんだから問題ない」
「ぐはっ!!そうか」
そして小筆で名前を書こうとし……長は動きを止めた。
「どうした?」
「失念した。消耗品だから後で買おうと思って忘れていた。名前を入れれば終わりだったのだが……」
「俺のやつを使うか?」
「…………そうだな」
「じゃぁ少しまっt」
長は撻器の特徴的な束ねられている髪を引っ張る。
驚いてそのままバランスを崩すが、それに目をかける事なく撻器の毛先に墨をつけ、そして最後の仕上げである名前を書いた。
「助かった。感謝する」
「……おい、俺の髪は筆じゃない」
「筆が無い時に代用できるだろうなぁ、と思ってつい」
「ついじゃない!!墨が飛び散って汚れる危険があるだろ!!」
「落ち着け。ほら、動くな」
そう言って、持ってきていたスポンジで毛先をふき取る。
それで完璧に取れるわけでもないが、少しだけ汚れる脅威は無くなった、のかもしれない。
「全く、長のこう言った天然には毎回驚かされる」
「天然?私が?」
「そうだ。そもそも、書初めだって1月2日にやるのが一般的なのにまさか元旦に書くとは思ってもいなかった」
「なん……だと……?なぜそれを先に言わない!?」
「え?」
「もう紙は無いと言うのに……これらは燃やすか」
「ま、待て!!一般的には、って事であって今日書いたって問題ない!!」
「しかし、伝統行事なのだからそれに則り……「とりあえずおせちでも食べよう!!」
せっかく自分の髪を犠牲にしてまで書いたものを捨てられたらたまらない、と撻器は長の背中を押してダイニングへと向かった。
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