柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「おい、長(おさ)」
「……名前を教えたはずだが?」
「名前で呼ぶよりもこっちの方がしっくり来ただけだ。課長と言うよりも長の方が響きがいいだろう?」
「好きにしろ」
「ぐはっ、つれないなぁ」
撻器が長の家に滞在して1週間。
一向に撻器は出ていく気配がない。
何度か確認をとっても、動けそうにないとしか言わなかった。
「お前には息子がいるようだな?早く会ってやれ」
「創一の事か?あいつなら死んで最初に会った。楽しそうな事に巻き込まれていて羨ましい限りだ」
「心配しないんだな」
「まぁ、多少は心配したが、あいつは俺よりもはるかに楽しそうな業で羨ましい。それに、創一ももう子供じゃない。俺がいなくても何とかするだろ」
「また会ってやったらどうだ?」
「会ったところでしかたがない。俺の姿は見えていなかったみたいだからな」
「……何だと?」
長は撻器の姿が半透明だがハッキリと見えている。
足はないのかと思ったが、きちんとタイヤ靴を履いているのさえ確認できている。
「言っておくが、長の幻覚ではないぞ」
自身の幻覚、幻聴を疑った時と同じく、撻器は言った。
そのタイミングも完璧でますます疑いたくなったが
「質問をしていて分かっただろう?お前の知らない事を俺は全て答えた。俺の関係者しかしらない情報も、だ」
「もしもお前の答えが俺の求めていた答えだとしたら?」
「ぐはっ!!お前は疑い深いんだな。その可能性もなくはないが、長が俺の姿を求める必要性があるのか?」
「……ないな」
もしも幻覚・幻聴の類を作ることが可能だとすれば、自分の部下だった箕輪が前に現れる可能性が高い。
現れたとしても労いの言葉をかける程度しかできないのだが。
「ハッキリと言うんだな……少し傷ついたぞ」
「お前が傷つこうが私には関係ない。それよりも、まだ動けないのか?」
「前も言ったが駄目だ。せいぜいこの家の中が今の俺の行動範囲内だ。扉を開けるのにも苦労している」
「幽霊なのに扉を開ける必要があるのか?」
「実際に扉が開くわけではないが、扉を通り抜けるためには《開ける》という行動を起こさないと駄目みたいだ。面倒だが生前のようで面白い」
「どこに面白さを感じたのかは分からないが、そう言うものか」
「あぁ。それに」
離れていたはずの撻器が一気に長の傍まで寄る。
あのタイヤ靴を利用したとはいえ、こいつの身体能力は高いものだな、と長はぼんやりと思った。
「こうして触れるのも、集中すればできることだ」
死んでいる撻器の指が、左頬をなぞる。
確かにあるその感触に、長は目を見開いた。
「ぐはぁ!!そんな顔もするんだな。それにどうしてこんなに毛が生えているんだ?」
「触るな」
払いのけるが、すり抜けるだけで感触は消えていた。
撻器は不満そうに口をとがらせる。
「何だ、俺に触れられて嬉しくないのか?」
「別に。こんな所で体力を使うな。温存しておけば早くここから出られるだろう」
「ふむ、それも一理あるな。しばらくは大人しくしていよう」
そう言って我が物顔でソファに座り込んだ撻器を見て、長は小さくため息を吐いた。
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