柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「長は俺と一緒にいて楽しくないのか?」
「何でお前と一緒にいて楽しいと思わなければいけないんだ?」
「答えにはなっているが、質問を質問で返すな~」
自分の周囲をずっと周り続けている撻器に長は目も合わせず、《仕事》の書類に目を通していた。
撻器はつまらなそうに後ろから書類を覗き込む。
「邪魔だ」
「実際にはお前に触れているわけでもないんだから邪魔じゃないだろ?俺の質問に答えろ」
「さっきも言った。何でお前と一緒にいて楽しいと思う必要がある?」
「こんなにも一緒にいるじゃないか」
「お前がここに居座っているせいでな」
体力を回復させてここから出ていく、とリビングで大人しくしていると思いきや、寝室に入ってきたり浴室に入ってきたりと、自由気ままに行動している撻器に長は頭を悩ませていた。
かつての好敵手(と言っても1度しか戦ったことがないが)の質問に応える事はそこまで嫌ではなかったし、自分自身も何度か質問はした。
しかし質問も終わり、それでも数か月近く我が物顔で家にいられるのは心地よいものではない。
「ふむ。俺がいるせいで長は笑わないのか?」
「は?」
「お前と一緒にいて、俺はお前の笑顔を見たことが無いぞ」
「……笑顔になる必要などないだろう」
自身の過去もかかわる事でもあるが、密葬課として感情の殆どを必要としたことがない。
何も感じてはいけない、何も思ってはいけない。
ただ秩序を守るために、相手を殺し、自分自身も殺した。
「必要あるぞ~?笑顔は楽しくなる」
「逆だろ」
「笑顔でいれば自然と楽しくなるもんだ。ほら、笑ってみろ、ぐはぁ!!って」
独特な笑い声を出して撻器は笑う。
そう言えば自分は撻器の笑顔ばかり見ていると思った。
「お前は楽しそうだな」
「まぁな。立会人になってからは楽しい事ばかりだ。やはり自由はいい」
「今は究極の自由だな。どこに行っても何も言われない」
「皮肉で言っているのか?」
「さぁ?」
むっと顔を変えた撻器から視線を外し、書類確認に戻る。
あと数行で読み終わる時に、急に頬を摘ままれている感触。
驚いて振り返ると、撻器が後ろから頬を摘まんでいた。
「疲れるんじゃなかったのか?」
「笑わないなら無理やり笑わせるまでだ」
そう言って口角を持ち上げるようにいじるが、長の頬はピクリとも動かない。
指の感触が上に滑ってきた、と長は思った。
「触れる事ができても動かす事はできないんだな」
「まぁな。慣れればできるかもしれんが、俺の限界はここまでだ」
降参だ、と撻器が手を離した。
書類を読み終わらせ、撻器に体を向い合せて口を開く。
「諦めろ。お前の為に笑う事はない」
「俺は諦めんぞ」
「笑ったところで何がある?」
「長も俺と一緒にいて楽しいと思ってくれていれば、俺も嬉しいに決まっているだろ」
だから笑え!!とニコニコしている撻器を見て、長は眉間のしわが寄る。
「お前という人間は全く分からないな。俺に構う必要性がないというのに」
「ぐはぁ!!そんなの長の事が好きだからに決まっているだろう」
「……」
「ん?どうした?照れたのか?」
「バカな事を言っているお前にあきれただけだ」
そう言ってそっぽ向いた長に対し、照れ屋だなぁ、と撻器は笑った。
「俺は諦めないからな!!」
「勝手にしろ」
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