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柚の樹と螢

柚の樹と螢

pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場 不定期に増えます よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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いつか書こうと心に決めつつずっと放置していた結果自分でも何を書きたかったのか分からなくなってしまった作品ですギャフン
近くにいるとウザいと思っているくせに遠くにいると寂しくてムカつくという無茶ぶりをかますちゃんみだを私は好きだと叫びたい、そんなみとみだみとだったのは覚えています。


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彼の許す境界線と言うのはあまりにもあいまい過ぎて、どこからどこまでが許されて、どこからどこまでが許されていないのか、まるで暗闇の中を手探りで歩いているような、そんな感覚に近い。ただ彼はとても分かりやすく、近すぎれば鬱陶しそうに距離を取り、逆に遠ければ自分から行動を起こして手を引いて導いてくれているような気はする。
ただその境界線は気まぐれのように絶えず変化していき、いつまで経ってもその境界線を掴んだと確信したことは無かった。

「つまり、何が言いたいんじゃ?」

門倉が何本目になるか分からない煙草のフィルターを噛む。苛立っている時によく見せるその癖は今は不愉快に感じる事はない。自分でもこんな曖昧に言葉を濁されて相談されれば苛立っているに違いないのだから。

「きちんとあいつの事を理解していない俺を、きちんと恋人として認められているのかと疑問に思う」
「それを俺が知るか」
「だよなぁ」

分かっていて聞いたのか?と門倉の眉がわずかに上がるが、巳虎を咎める様子はない。あるいは呆れているのだろうか。
巳虎はその視線に苦笑いを浮かべ、ジョッキに残っていたビールを一気に飲み干した。ぬるくなったそれはあまり美味いと感じなかったが、喉の渇きはなくなった。

「だってよ、家に遊びに行っていいか?って聞いたら『うるさいです』で終わるし、だからって仕事で忙しくて少しの間話す機会が減ると無言で蹴って来るんだぜ?」
「弥鱈らしいの」
「まぁな。そうなんだよ。あいつらしいっちゃあいつらしいんだけどよ。俺はあいつの事を理解できていないってのがムカつくんだよ」
「ふぅん」

気のない返事をして煙を吐き出し、短くなった煙草を灰皿に押し付けた。

「そんなのはワシに聞くんじゃなく、弥鱈自身に問い詰めるべきじゃろ。俺はお前よりも弥鱈を知っているわけがないし、何よりあいつが心許しているのなんてお前だけじゃろ」
「それができたら苦労しねぇよ……」

いつも傲慢である巳虎が突っ伏して弱音を吐くとは、よほど重症のようである。
こんな女々しい姿も、何だかんだで弥鱈を想って吐き出す惚気混じりの相談もうんざりだ、と門倉はスマホを取り出すと巳虎が一番会いたいであろう人物の電話番号を呼び出した。


「……巳虎さん」

酔いが回ってしまったのか、いつのまにか眠っていたようだ。
肩を軽く叩かれる感触で目が覚め、顔を上げてみれば、恋人であり今の悩みの種でもある弥鱈がいるではないか。

「ん……弥鱈!?」
「うるさいですよ」

しかめ面になり巳虎から距離を取った。

「え?何でお前?門倉は?仕事は……?」
「門倉立会人は帰りましたよ。仕事は終わったからここにいるに決まっているじゃないですか。それとも巳虎さんの為に仕事を投げ出したとでも?」
「いや、お前に限ってそれはないと確信している」
「そうですか。……ほら、帰りましょう」
「あ、まて会計しねぇと」
「それなら門倉立会人が。後日請求すると」
「悪い事しちまったな……」
「ほら、さっさと帰りますよ」

そう言って巳虎を待つことなくさっさと外に出てしまう弥鱈の後姿を見て、巳虎は苦笑を浮かべその後を追う。


息が白くなるほど寒い中、2人は同棲しているマンションへと向かう。徒歩だと少し離れているがわざわざ黒服を呼ぶまでもない。
一定の間隔で街灯があるその道には巳虎と弥鱈の2人しかいない。時折民家から何やら楽しそうな声は聞こえてくる。

「なぁ、弥鱈」

巳虎が弥鱈の肩を抱く。普段なら無言で手を払いのけるが、弥鱈はチラリと巳虎を見るだけだ。

「……何ですか?」
「今日は手を払いのけないんだな」
「払いのけてほしいんですか?」
「普段からこうだと嬉しい」

もしかしたら酔っていると思っているから多少は目を瞑っているのかもしれないな、と巳虎は肩を抱く手を離そうとしない。

「普段からこんな風にさせるわけにいきませんよ。変に噂が流れてしまえば面倒ですから」
「俺は別にいいんだけどなぁ。弥鱈と恋人だって全員にバレたって」
「私は困りますよ」
「何で?」
「これが当たり前と思えるようになるなんて、気持ち悪いじゃないですか」
「何だそれ」
「関係なんて絶えず変化するものですよ。それが嫌になるのなら別れたっていいんですから」

当たり前になってしまえば、胸に開く穴は自分では埋められないくらい、深く大きなものになってしまう。それが嫌で距離を取り、離れられると穴が開きそうで思わず自分から手を引いてしまう。
そんな自分が女々しくて嫌で、いっそのこと別れてしまえば楽になってしまうのでは、と弥鱈の思考が傾きかけたその時、巳虎はハッキリと答えた。

「え?ヤダよ。俺弥鱈が好きだから一緒にいたいし。それだけで別れるわけないだろ?」
「面倒だと思っているんじゃないんですか?」
「まぁたまには思うけど。でも一緒にいて楽しいと思っているんだからいいだろ」

変化していくものなのだから、それを巳虎はただひたすら掴もうと一緒にいてくれればいい、と弥鱈は自分勝手に思う。そうすれば自分達が離れる事はきっとない。あの巳虎が自分に振り回されているのにも関わらず、わざわざ人に相談してまで一緒にいようとしているのがいい証拠だ。

「巳虎さんってアホですよね」
「はぁ!?」

面倒なら手放せばいいのに、それをしないで自分の事を想ってくれている巳虎の愛情に、弥鱈はキスで返してやろうかとその胸元を掴んだ。
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柚樹 螢
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女性
自己紹介:
撻器さんと長の組み合わせが大好物な腐女子です
妄想をいただけると勝手に書いていることもあります

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