柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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久し振りにやってきた実家はすっかり古ぼけた、との感想しかない。当たり前かと思い車から降りると、玄関先で両親が待っていた。老け込んだその姿は確かに自分に任せたい言い出したのも納得できるな、とフロイドは思う。
「久しぶりだな」
「……あぁ。老けたな」
「まぁな」
あれから何十年も経っているのだから当たり前か、と思いつつ、フロイドは視線を動かす。
「んで、ガキは?」
「呼んでくるから待っていてくれ」
母親が家の中に戻り、父親がフロイドの顔を目を細めながら見つめる。やがて深いため息を吐いて
「……何も親らしい事をしていないし、こんな事を言う権利もないが、元気そうで良かった」
「あんた等に心配される事なんてねぇよ」
むしろ今の自分は周囲を巻き込むような、危険な仕事をしている。だからこそ子供を引き取るなんて面倒かつ厄介な事を避けたかったのだが。
「こんにちは……」
ふいに、か細い少年の声が届いた。視線を下げると、そこには1人のやせ細った少年がいた。なぜか体中に包帯を巻かれており、左腕はギブスで固定されている。右手で子供には大きなキャリーケースを引っ張っている。恐らく彼の私物が詰め込まれているのだろう。
「……お前が、隆臣なのか?」
「はい、梶隆臣です」
姉の子供と聞いていてふてぶてしいような、正確に問題のある子供を想像していただけにフロイドは少しばかり驚いた。隆臣はフロイドを少し見つめた後、すぐに視線を地面へと落とした。
「隆臣くん、この人がおじさん。お母さんの弟だよ」
「フロイドだ」
「……よろしくお願いします」
また視線を合わせたかと思えば、小さな声で挨拶してすぐに視線を落とす。何やら問題がありそうな面倒な子供だと思いながらも父親に声をかけた。
「とにかく、1か月だからな。その後どうするかは俺に決めさせてもらう」
「あぁ……ありがとう」
「ふん。……おい、来い」
「はい」
フロイドが先に歩くと、隆臣は祖父母にお辞儀をしてからフロイドの後を追う。車の鍵を開けて後部座席にキャリーケースを置くと、助手席に座るように促す。
「お邪魔します」
小さく会釈してから席に座り、シートベルトをしめる。それを確認してフロイドはアクセルを踏んだ。
家……と言っても、仕事上一時的に使っている貸家に着くと、後部座席のキャリーケースを持ってやり家の鍵を開ける。
「今日から1か月間お前の家はここだ。案内してやるから覚えろ」
「はい」
キッチン、トイレ、風呂、と簡単に説明すると、鍵のかかっている部屋の前に立ち、そのドアをコンコン、と軽く叩いた。
「ここは俺の部屋だ。絶対に何があっても入るな。分かったな?」
「分かりました」
「それと、俺は仕事でいない時の方が多い。そん時はこの部屋以外適当に使え。飯は……後でお前でも作れるもんを買っておく。それと金を置いておくからそれを使え。分かったな?」
「はい」
小さな声で、小さく頷いた隆臣を確認して、フロイドは空き室だった部屋にキャリーケースを置く。
「ここがお前の部屋だ。好きに使え。必要があるもんがあったら言え」
「……はい」
今まで無表情だった隆臣に変化があった。
戸惑っているような、困っているような、そんな表情を浮かべた。
フロイドはそれに気づいて眉をひそめたが、特に気にすることなかった。
ひどく静かだ、とフロイドは思う。
子供だからと言って全員が騒がしいわけではないが、家の中を詮索する気配も、部屋から出て行く気配もない。見た感じ内向的な少年のようだが、何か少しした違和感がある。
「そういや、あの傷……」
自分の両親、隆臣にとっての祖父母が加えたわけではないだろう包帯。姉が死んだことと関係しているのかは知らないが、それがもしも原因だとしたら。
「……何を考えているんだか」
隆臣がどうであろうと自分には関係ない。ただ仕事の邪魔をしなければ子供を1か月養うくらいは簡単な事だ。
しかしどうしても胸の奥につかえる違和感が取れず、フロイドはくしゃりと髪をかき混ぜた。
「久しぶりだな」
「……あぁ。老けたな」
「まぁな」
あれから何十年も経っているのだから当たり前か、と思いつつ、フロイドは視線を動かす。
「んで、ガキは?」
「呼んでくるから待っていてくれ」
母親が家の中に戻り、父親がフロイドの顔を目を細めながら見つめる。やがて深いため息を吐いて
「……何も親らしい事をしていないし、こんな事を言う権利もないが、元気そうで良かった」
「あんた等に心配される事なんてねぇよ」
むしろ今の自分は周囲を巻き込むような、危険な仕事をしている。だからこそ子供を引き取るなんて面倒かつ厄介な事を避けたかったのだが。
「こんにちは……」
ふいに、か細い少年の声が届いた。視線を下げると、そこには1人のやせ細った少年がいた。なぜか体中に包帯を巻かれており、左腕はギブスで固定されている。右手で子供には大きなキャリーケースを引っ張っている。恐らく彼の私物が詰め込まれているのだろう。
「……お前が、隆臣なのか?」
「はい、梶隆臣です」
姉の子供と聞いていてふてぶてしいような、正確に問題のある子供を想像していただけにフロイドは少しばかり驚いた。隆臣はフロイドを少し見つめた後、すぐに視線を地面へと落とした。
「隆臣くん、この人がおじさん。お母さんの弟だよ」
「フロイドだ」
「……よろしくお願いします」
また視線を合わせたかと思えば、小さな声で挨拶してすぐに視線を落とす。何やら問題がありそうな面倒な子供だと思いながらも父親に声をかけた。
「とにかく、1か月だからな。その後どうするかは俺に決めさせてもらう」
「あぁ……ありがとう」
「ふん。……おい、来い」
「はい」
フロイドが先に歩くと、隆臣は祖父母にお辞儀をしてからフロイドの後を追う。車の鍵を開けて後部座席にキャリーケースを置くと、助手席に座るように促す。
「お邪魔します」
小さく会釈してから席に座り、シートベルトをしめる。それを確認してフロイドはアクセルを踏んだ。
家……と言っても、仕事上一時的に使っている貸家に着くと、後部座席のキャリーケースを持ってやり家の鍵を開ける。
「今日から1か月間お前の家はここだ。案内してやるから覚えろ」
「はい」
キッチン、トイレ、風呂、と簡単に説明すると、鍵のかかっている部屋の前に立ち、そのドアをコンコン、と軽く叩いた。
「ここは俺の部屋だ。絶対に何があっても入るな。分かったな?」
「分かりました」
「それと、俺は仕事でいない時の方が多い。そん時はこの部屋以外適当に使え。飯は……後でお前でも作れるもんを買っておく。それと金を置いておくからそれを使え。分かったな?」
「はい」
小さな声で、小さく頷いた隆臣を確認して、フロイドは空き室だった部屋にキャリーケースを置く。
「ここがお前の部屋だ。好きに使え。必要があるもんがあったら言え」
「……はい」
今まで無表情だった隆臣に変化があった。
戸惑っているような、困っているような、そんな表情を浮かべた。
フロイドはそれに気づいて眉をひそめたが、特に気にすることなかった。
ひどく静かだ、とフロイドは思う。
子供だからと言って全員が騒がしいわけではないが、家の中を詮索する気配も、部屋から出て行く気配もない。見た感じ内向的な少年のようだが、何か少しした違和感がある。
「そういや、あの傷……」
自分の両親、隆臣にとっての祖父母が加えたわけではないだろう包帯。姉が死んだことと関係しているのかは知らないが、それがもしも原因だとしたら。
「……何を考えているんだか」
隆臣がどうであろうと自分には関係ない。ただ仕事の邪魔をしなければ子供を1か月養うくらいは簡単な事だ。
しかしどうしても胸の奥につかえる違和感が取れず、フロイドはくしゃりと髪をかき混ぜた。
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