むしゃくしゃしたからリクエストを受けました記念で、匠成織さんリクエストの貘ハルです。
ちょこっとだけ甘い程度でどっちかというと+に近い話かと
[2回]
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「ハルは恋人を作った事がある?」
「……いないけど、急にどうしたの?」
貘からマグカップを受け取り首を傾げた。
淹れられたラテアートが施されているそれをスプーンでかき混ぜ一口飲み込めば、ほろ苦さと甘さが口の中に広がる。
「これ」
貘が取り出したのは、どこにでも売ってる雑誌だ。
その表紙には可愛らしい文字で【恋人特集】と書かれてあった。
「何それ」
「恋人特集。恋人と一緒に行きたいデートスポットとかカップルの馴れ初めとか、色々書かれているよ」
「ふぅん……貘さんはそういうの興味あるんだ」
「見ていると面白いよ。このカップルはすぐ別れそうだなぁ、とかここ行ってみたら面白そうだなぁ、とか」
ハルも読む?と差し出すがハルは受け取る気配がない。
「僕、そういうの興味ないから」
「男の子なら興味持たないと。読んでみなって」
「いいってば」
ほら、と強引に渡された雑誌を仕方がなしにめくり始めた。
文句を言いつつ読んでいるハルを笑顔で貘は見つめている。
「変なのばっかりだね」
「そうかな?これなんて面白いじゃん。キスの味は?ってやつ」
「そんなのを気にしてキスってするの?」
「まぁ、美しい思い出ってやつじゃない?」
「ふぅん……」
「ハルはまだキスの味を知らないの?」
「興味ないからね」
「そうなんだ」
また一口マグカップに口をつける。
少しだけだけ冷めたエスプレッソがちょうど飲みやすい。
「ハール」
「なぁに……」
顔をあげると、貘が眼前に迫っている。
睫毛が長い、とぼんやりハルは思った。
「……ハル」
不満げな貘の声。
2人の間を雑誌が隔てている。
「させるわけないでしょ、貘さんのバカ」
「ちょっとその気にさせたのに」
「ならないよ」
雑誌をのけようとする貘と、それを阻止するハル。
「俺とのキスはしたくないの?」
「そういうわけじゃないけど」
「じゃぁ、何で」
「僕、まだ告白されていないし」
そういう順番、貘さん守れないの?
ハルの言葉に目を丸くし、そして笑う。
「意外と乙女だね」
「それに書かれてあった事を言っただけだよ」
「真面目に読んでいるんだねぇ」
「渡されたら読むよ」
「ハルのそういうところ、好きだよ」
今度はハルが目を丸くさせる。
「……それが恋人になってほしいって告白?」
「うーん、まだハルには順番を教えなきゃいけないかぁ……。まぁいいや。今からどこかでかけようか」
恋人じゃなくてもデートはするものだよ、と貘はハルへと手を差し出した。