柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「貘さん何を読んでいるの?」
ホテルのVIPルームに位置するその部屋の中で、ソファに座って何か熱心に読んでいる貘の背中にハルは声をかけた。
その背中越しからわずかに見えるその本は、厚さと大きさからして雑誌のようにも見える。
ハルに声をかけられた貘は振り返ると笑いかけた。
「ハルにはまだ早い本」
「僕はそんなに子供じゃない」
「そうむくれるところが子供だよ」
貘の言葉にその雑誌の内容が何かを察した。
元々興味がないものだが、子ども扱いされればムキになりその中身を見ようと覗き込む。
「……へぇ、貘さんってこういうのが好きなんだ」
そこに載っていたのは、清楚な顔立ちをした女性がセーラー服を身にまとっている写真だった。
大胆に腿を出しているその写真は確かに色気を放っている。
しかし貘はつまらなそうに写真を見ている。
「セーラー服はいいと思うけどね」
「思うけどね?」
「ちょっと俺の求めていた感じとは違うんだよねぇ……。まぁ楽しめるけど」
そう言ってページをめくっていく。
進むにつれて卑猥な写真が多くなってきた。
「求めていたのと違うって、どんな人が好きなの?」
「凛としていて綺麗で汚しにくそうな……ハルみたいな子」
「貘さんって悪趣味」
「えぇ?本気で言ったんだけどなぁ」
「僕は男だよ」
「でも似合いそうだよね、セーラー服。一回着てみない?」
「……」
ハルはいつもの、何を考えているのか分からない瞳を貘へ向ける。
しばらく見つめ合い、そして
「……まぁ、物は試しで一回だけならいいよ」
と言った。
貘は嬉しそうに笑うとソファから立ち上がり、ベッドルームへと向かう。
そこにあったダンボール箱を苦労しながら持ってくると、その中身をハルに見せた。
「じゃーん」
「これ、いつ買ったの?」
「色んなコネがあるからね。オーダーメイドだから本格的でいいでしょ?」
そこには紺と白のセーラー服がビニールに包まれて入っていた。
一回も出されていないそれには皺ひとつついておらず、リボンも同封されていた。
「どっちがいい?」
「どっちでもいいよ」
「そうだなぁ……ハルはお嬢様ってイメージが強いから紺がいいかな?俺は白にしようっと」
「待って、貘さんも着るの?」
「1人より2人の方がいいでしょ?」
「いやまぁそうかもしれないけど……貘さんってそういう趣味なんだ」
「一回は試してみたかったんだよねぇ。ハルも着てくれるし、着替え終わったら写真撮ろうか」
「やれやれ」
呆れたようにため息を吐き、ハルはセーラー服に袖を通す。
下着も女物にしてみようか?と貘に言われたが丁重に断った。
「やっぱりハル似合うね~!!」
「そうなの?」
着替え終わった2人は姿見の前で自分の格好を確認していた。
紺のセーラーに赤いリボンを巻いたハルと、白のセーラーに青いリボンを巻いた貘が写っている。
ちなみにスカートの丈はハルが膝まで隠れているのに対して貘は膝上だ。
「ハル、もっとスカートは上げた方がいいよ。こうやって折るかベルトで巻いて調整しようよ」
「そんな事しなくてもいいんじゃないの?」
「だーめ!!せっかく可愛いんだからもっと気をつかわないと!!」
そう言って貘がハルのスカート丈を短くさせる。
足元がスースーして嫌だなぁ、とハルは短くなったスカートをつまんで思った。
「よし、どこか出かけようか」
「え?この格好で?」
「化粧もすれば絶対に気づかれないよ~。それに面白いと思わない?たまには女の子の気持ちになって出かけてみるのも」
「……」
女の子の気持ち、と言われても理解したいと思ったことはない。
しかし楽しそうに歩いているその姿は、身分を明かせず人と距離を置かなければいけない自分には羨ましいと思ったことはあるので少しだけ興味があった。
「ちょこっとだけだよ」
「よしっ、決まり!!ちょっと待っていてね、化粧品と車の用意を……」
貘がスマホを取り出し連絡をしようとしたその時、窓ガラスが割れた。
「「え?」」
ここは最上階、屋上は厳重に閉鎖されているはずであり、ヘリコプターの類が近づいてきてそこから襲撃されたわけじゃない。
固まっている2人の目の前に、その人影は受け身を取り、そして立ち上がった。
「貴様……創一様になんて格好をさせているんだ!?」
「え?創一様?」
「……丈一?」
ダイナミックお邪魔しますをしたその人物、それは夜行丈一だった。
その顔は憤怒の表情を浮かべており、明らかに貘に対して敵意を抱いている。
「創一様、私の物で申し訳ありませんが、これを」
上着を脱ぐとセーラー服のハルの肩にかけた。
ハルは戸惑った顔を浮かべている。
丈一とは分かっても記憶があいまいなせいだろう。
「覚悟しろよ……」
「ハルは俺の友達で、しかもハルが着てみてもいいって言ったんだよ?」
「貴様がそのようにそそのかしただけだろうが。……粛清だ」
ゴキリ、と指の骨を鳴らし、貘に手刀を下ろそうと振り上げたその手は、何者かによって掴まれた。
「おい、こいつに手を出すな」
「さっすが伽羅さん、俺のナイト様」
「気持ち悪い格好で気持ち悪い事言うんじゃねぇよ」
何だその恰好は、と呆れた声で伽羅が貘に視線を向けた。
「邪魔をするな」
「生憎こいつの専属立会人なもんでな、こいつが死んだらつまんねぇだろ。殺したければ俺を何とかしてみろよ、爺さん」
「このくそガキが……!!」
突然始まった丈一と伽羅の闘いにより、慌てて貘とハルは部屋から飛び出す。
「……どうしようか貘さん」
「う~ん……とりあえずクレープでも食べに行く?」
数分後、ハルがいない事に気づいた丈一の暴走によりホテル内、およびその近辺が修羅場になるのを、クレープを食べたりプリクラを撮っていたりしていた貘とハルが気づく事はなかった。
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