柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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『君はさ、こっちには来れないんだよ』
白銀の髪の男が笑顔で額人へと言い放つ。
その彼の隣には、蜂名が無表情で立っていた。
「何をバカな事を……」
白銀の男は危険だ、と額人の本能が告げる。
蜂名を守ろうと駆け寄ろうとするが、まるで縫い付けられたかのように足が動かない。
『ほらね、やっぱり』
必死に動かそうとする姿がおかしくて仕方がないような、嘲笑混じりの声は額人を見下していた。
「……っ、蜂名!!」
額人は蜂名へと呼びかける。
蜂名は無表情のまま額人へと視線を向けた。
真っ黒なその目は、額人を確かに映しているが何の感情を持っていない。
「蜂名、こっちへ……」
動かぬ足の代わりに手を伸ばす。
蜂名が歩み寄ってくれれば届く距離だ。
『どうするの?』
白銀の男が蜂名へ問いかける。
蜂名はしばらく額人を見つめ……首を横に振った。
「君は、本当の僕を知らないから。一緒にいられないよ」
さようなら
呟くような別れの挨拶をして蜂名は先へと歩き出す。
「は……蜂名!!待ってくれ、だめだ、行くな!!!!」
『みっともないなぁー。彼が君の元を離れると決めたんだから潔く諦めたら?』
白銀の男は呆れた目を額人に向けると、すぐに蜂名の元へ歩み寄りその肩に腕を回した。
『もう大丈夫だよ。君の役目はそこで終わり。あとは俺に任せてね』
足は動かない、声は届かない。
自分は何もできないまま、何も知らないままこんな終わりになってしまうのか。
こんな……「ガクト?」
揺り動かされるその感覚に額人は目を覚ました。
最初に見えたのが見慣れた天井に少しの安心を覚える。
悪夢を見たせいか、汗ばんだ体が不快に感じた。
「……蜂名、だよな?」
「そうだけど……大丈夫?かなりうなされていた」
あまり表情を変えない彼が、自分を心配してくれているような気がする。
「悪い。あまりよくない夢を見ていたようだ」
「そうなんだ」
「……なぁ、蜂名。お前は……」
「ん?」
「お前は……」
その先を言うべきかどうかためらう。
もしも聞いたところで真実を言わないかもしれない、もしかしたら聞いたせいで自分から離れてしまうかもしれない。
「本当のお前とは、違うのか?」
しかし、あの夢と同じように、何も知らないまま終わるのだけは嫌だった。
「……」
「蜂名」
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。君の思っている蜂名直器と僕の思う蜂名直器は別さ。でもどちらも本当の僕だから、本当のお前とは違うのかって聞かれても肯定も否定もできない、かな」
「……そうか」
「納得してくれた?」
「納得はしていないけど答えがあるならそれでいい」
安心したかのようにまた体をベッドへ預けると、その隣に蜂名が入る。
「何があったのか分からないけど、一緒に寝よう。不安なら手を繋いだっていい。君が安心してくれるなら僕は傍にいるよ」
「……ありがとう」
蜂名を腕の中におさめるとガクトは目を閉じる。
苦しいよ、と声が聞こえたが今日だけは自分のわがままを聞いてもらいたいと、少しだけ抱きしめる力を込めた。
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