柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「いつもここにいますね」
放課後の中庭、そこの片隅にあるウサギ小屋。
窮屈そうにその中でウサギのエサをやっている鄧艾に鍾会が呆れたような声色で言った。
「鍾会殿」
「飼育委員がいるのにどうしてあなたが世話をしているんですか。私と同じ生徒会でしょう?」
「飼育委員の方々も忙しいようだったので、暇な時に少し世話をしているだけですよ」
「ほぼ毎日のように世話をしているじゃないですか」
ただ飼育委員の奴が面倒がっているだけですよ、と鍾会は言う。
鄧艾は困ったように笑ってウサギの背を撫でていた。
「まぁ放課後だけでも、時間があるので」
「その前に今は試験前ですから勉強すべきです。それとも……勉強しなくても余裕だと言うのですか?」
ギロリと睨みつければ首を横に振る。
悔しい話だが、いつも僅差で鄧艾に負けている鍾会にとって、このようにウサギと戯れている鄧艾を見ているのは面白くないのだ。
「余裕があるわけではありませんが、この子達を学校で飼育している以上、放っておくことができないので」
「相変わらずお人よしのようで……そう言えば生徒会に入ったのも子上殿に頼まれたからですよね?」
同級生の司馬昭が鄧艾に頼み込んでいた姿を思い出す。
兄から受け継いだ生徒会長の座は、人をまとめる才能があるがいつもやる気がない司馬昭には荷が重く、周りにいる生徒会役員たちが支えながら司馬昭の尻を叩いているようなものだ。
「自身としても役に立てるのなら喜んでやろうかと思いまして」
「だからお人よしなのですよ……断ればいいじゃないですか、別の委員会をやりたい、って思っていたのではないのですか?」
「楽しくやっているので問題ありませんよ」
「そうですか」
素っ気なく言い放った鍾会が、指だけをウサギ小屋の中に入れてみた。
子ウサギがぴょんと跳んできて、鍾会の指に鼻先をつける。
「噛まれてしまうかもしれませんよ」
「その前には避けますよ」
そう言って指先で鼻をくすぐってやれば、目を細めて気持ちよさそうにしていた。
「ウサギ、好きなのですか?」
「別に……ただあなたがそうやって楽しそうに世話をしているものですからどんなものかと思いまして」
「可愛いですよ。懐いてくれると寄ってきてくれますし」
そう言われてみれば、鄧艾の周りにはウサギ達が集まっている。
餌を持っていないのにこうも寄っているのは懐いている証拠なのだろう。
「そういうものですか」
「えぇ。……おっと、そろそろ帰らないといけませんね」
日が沈み辺りは暗くなっている。
入口も窮屈そうに出てきた鄧艾に、近くに置いてあった鞄を拾って渡した。
「ありがとうございます」
「別に、礼を言われるほどでも。……それと、私も今度からウサギの世話をしてやりますよ」
「え?」
鄧艾が驚いた顔をする。
「1人より2人の方が効率がいいじゃないですか。ウサギの世話をしていたから……って理由で今度の試験に勝ったとしても嬉しくありません」
「しかし、鍾会殿の負担に……」
「この位平気に決まっているじゃないですか。何か文句ありますか?」
再度睨みつけるような視線を向ければ、鄧艾は少し悩み、そして笑顔を向けた。
「嬉しいですよ、ありがとうございます」
「……別に礼を言われる事じゃないですよ、私がやりたいと思ったからやるわけですから」
そんな事を言いながら2人は並んで歩く。
(本当は)
鍾会は鄧艾を横目で盗み見る。
(窮屈そうに世話をしているあなたの姿が可愛いからもっと見たい、なんて言えるわけがない)
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