柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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契約書にサインを
「撻器」
いつもは自室に戻って着替えてからリビングへやってくる匠がまっすぐ撻器の座っているソファの横に立った。
「どうした?」
今まで「帰ってすぐに顔を見たい」と言っても「窮屈な格好のままいてたまるか」と言っていた匠がどうして今日に限ってこちらへやってきたのか。
振り返って顔を見てみると、いつもと変わらない……かと思ったが、心なしか緊張しているような面持ちだ。
「どうした?」
再度問いかけてみると、匠はじっと撻器の顔を見つめた後、サイドテーブルの上に何かを滑らせる。
前かがみになってよく見ようとする前に、両肩を掴まれると強引に匠へと体の向きを変えられた。
「匠?」
「いいか?お前は今から先程渡した契約書に名前と押印しろ。何も聞くな何も考えるなとにかくそれだけやればいい」
「……連帯保証人か?」
しかし形としては昔どこかで見た事があるような気がする。
視線だけ横にずらそうとしたが、匠の射抜くような目はそれを許す気配がない。
「あのな、匠。契約書の内容が分からなければ俺もするかしないかなんて決められないぞ」
「お前はただサインと押印すればいいだけだ。後は私が手続きをやっておく」
「……もしもどうしても嫌なら破り捨てるからな」
そう言ってサイドテーブルに置かれた紙へ視線を向ける。
茶色の用紙は、やはり昔見たもので
「……破くのか?」
少しだけ落ち込んだ声の匠に撻器はぐはぁ、と笑いかける。
「こんにも素敵な契約書、破くわけがないだろう?これからもよろしくな」
重い薬指
左手のひらを照明にかざす。
その薬指には宝石が埋め込まれている、シンプルな銀色の指輪がされていた。
「いいだろ、それ」
ゴテゴテしたものは嫌いだと思ってな、と撻器は上機嫌に言っている。
匠はしばらく見つめた後、指輪を外そうとした。
「待て待て。どうして外そうとする」
「幾らだ、これ」
「ん?」
「金額は?」
一見、どこにでもありそうな指輪に見える。
しかしよくみればその繊細な細工や宝石を見ればそれがどれだけ高価なものか分かる、そんな指輪だ。
「俺の給料三か月ぶんくらいだ」
プロポーズする時はそれが定番なんだろ?と撻器が笑う。
「……」
「だから外そうとするな!!」
外そうとする手を掴み阻止するが、匠の力も強い。
「お前なぁ……サイズを知っている事にも驚きだがどうしてそんなバカな買い物をする」
「匠にプレゼントするなら気合が入るだろ」
「別の事にその気合を入れろ。そしてこれはつけているわけにはいかない」
「……俺と一緒にいるのが嫌なのか?」
目に見えて落ち込む撻器に、匠はいちいち説明しなくては分からないのか、と呆れたようにため息を吐く。
「撻器から貰った大切な結婚指輪を、くだらない奴等の血で汚してしまったら大変だ」
こんな重い薬指は家の中だけで勘弁してくれ、と言った匠の言葉に、撻器は嬉しくなって抱きしめた。
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