柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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俺がまだ幼かった頃、じいちゃんが連れてきたその男の子を見た時に、最初に思ったのは同じ人間かどうかと疑問に思ったことだ。
まるで彫刻のように恐ろしく整った顔は何を考えているのか分からない無表情で、何でこんな子供をじいちゃんが連れてきたのか次に疑問に思った。
「こちらは蜂名直器様だ。巳虎、お前が直器様の遊び相手になるんだ。失礼の無いようにな?」
「わ、分かったよじいちゃん」
じいちゃんが様付する位なんだから、俺も気を付けなければいけない、と思った。
直器様って呼ばれた男の子に「儂の孫です。何でも申し付けください」と言ってじいちゃんと黒服達が出ていくと、直器様は俺の事をじっと見つめてきた。
「……えっと、何して遊びますか?」
「……」
多分俺の周りにいる女の子よりもキレイな直器様は何も言わないでただ見つめてくるだけで、何となく居心地の悪さを感じてきた。
とりあえず部屋の中にあったおもちゃや本を並べて、その中から選んでもらおうとしたけど
「……巳虎のやりたいのでいいよ」
と、やっと口を開いてくれたと思ったら難しい事を言ってきた。
「お、俺が決めていいんですか?」
「うん。何でもいいよ」
「でも、俺は直器様の遊び相手になれと言われただけで……」
「巳虎が楽しくなかったら、意味ないからいいよ」
俺が楽しいと思っても、直器様が面白くなかったらじいちゃんに恥をかかせてしまう、って思った俺はすげぇ悩んだ。
悩んで悩んで悩んだ末に、海外の童話を読むことを提案した。
じいちゃんに買ってもらったその童話はわくわくするような話で、きっと直器様も興味を持つだろうな、って思った。
けど
「それは……いいよ」
「ど、どうしてですか?」
「内容覚えているし」
「あ、俺も覚えていますよ。ドラゴンが出てきたり……」
「違う。一字一句覚えているの」
「え?」
「さっき巳虎が言ったドラゴンが出てきたところって確か……」
少し思い出すようなしぐさを見せた後、直器様はスラスラと物語を語りだした。
慌てて童話を開くと、内容が完全に一致している。
「凄い……」
「読んだものとか、覚えたものは絶対に忘れないんだ」
「全部……ですか?」
「うん。気持ち悪い……よね?」
多分だけど、大人になった今で考えれば直器様はその驚異的な記憶力で周りに敬遠されていたのかもしれない。
でも、そんな事を全く知らなかった、今思うとバカな俺は
「すげぇ!!俺のじいちゃんみてぇ!!」
「え?」
「じいちゃんも色んな事をいっぱい知っているんだ!!直器もじいちゃんと一緒で色んな事を知っているんだろ?すげぇ!!」
と、じいちゃんと同じように物知りな凄い奴、としか見ていなかった。
もしも当時の俺に会えたとしたら、ぶん殴っている、確実に。
まぁ、そんな俺の反応に直器様は驚いた顔をした。
「怖くないの?」
「何で?……あ」
興奮してため口になっていて、一気に血の気が引いた。
失礼のないように、ってじいちゃんに言われていたのにそれを裏切ったから、じいちゃんに嫌われるって思っている方が強かった。
「も、申し訳ありません!!失礼な態度をとって……」
「ううん、いいよ。敬語より普通に喋ってほしいから。それと、僕は直器じゃない」
「直器じゃない?」
「うん。創一。切間創一って言うんだ。普段は蜂名直器って使えって言われているけど、巳虎は特別」
「俺は、特別……えっと、創一様「創一」……創一、いいのですか?勝手にその名前を呼んでしまうのは……「敬語はダメ」……いけないことじゃないのか?」
本当はダメなんだろうけど、じいちゃんは直器様……創一に「何でも申し付けください」って言われて、敬語はダメ、創一って呼んでって言っていたから言いものかと無理やり納得させていた。
そしたら創一は嬉しそうな顔をして
「初めて、僕の名前を呼んでくれる友達ができた」
って笑った。
笑った顔は無表情な顔よりもやっぱりずっと良くて、俺も何だか嬉しくなった。
創一が家に来て一緒に遊んだ日は1か月くらい続いた気がする。
じいちゃんがいる前ではきちんと直器様、って呼んでいたけどいなくなってから
「創一、今日は何して遊ぶ?」
「ジェンガがいいな。あったよね?」
「おう。持ってくるから待ってて」
と、俺も普通に創一と呼んでいたしため口になっていた。
遊んでいると創一が強くて勝てる事がなかったけど、それでも楽しかったし創一もよく笑っていた。
その後は自然と来る機会が減ってきて、やがて俺は遊び相手役をやる事がなくなった。
別れの挨拶をしなかったけど、何となく会う気はしたからそこまで悲しくなかった。
でも、ひとつだけ言える。
確かに俺は創一に会った、相も変わらず彫刻みたいなキレイな顔をしていた。
しかしまさか創一が賭郎お屋形様になるなんて知らなかったし、知っていたら確実に俺はあんな失礼な態度をとっていなかった、たぶん。
「ねぇ、巳虎」
「何ですかお屋形様」
「……2人きりの時は敬語はダメだって言ったでしょ?それに、創一って呼んでよ」
不満そうに頬を膨らませる創一……お屋形様に俺は苦笑いを浮かべる。
「今は職務中です」
「僕がいいって言っているからいいの」
「しかし……」
「いいったらいいの。……あ、さっき職務中だからって言ったよね?なら仕事終わったら創一って呼んでね。それと巳虎の家に遊びに行くから」
「え?は!?」
「自分が言った言葉に責任持とうね」
そう言って笑った創一の顔はやっぱりいい顔で。
その笑顔を知っているのはきっと俺だけなんだろうなぁ、って思ったらまた嬉しくなった。
まるで彫刻のように恐ろしく整った顔は何を考えているのか分からない無表情で、何でこんな子供をじいちゃんが連れてきたのか次に疑問に思った。
「こちらは蜂名直器様だ。巳虎、お前が直器様の遊び相手になるんだ。失礼の無いようにな?」
「わ、分かったよじいちゃん」
じいちゃんが様付する位なんだから、俺も気を付けなければいけない、と思った。
直器様って呼ばれた男の子に「儂の孫です。何でも申し付けください」と言ってじいちゃんと黒服達が出ていくと、直器様は俺の事をじっと見つめてきた。
「……えっと、何して遊びますか?」
「……」
多分俺の周りにいる女の子よりもキレイな直器様は何も言わないでただ見つめてくるだけで、何となく居心地の悪さを感じてきた。
とりあえず部屋の中にあったおもちゃや本を並べて、その中から選んでもらおうとしたけど
「……巳虎のやりたいのでいいよ」
と、やっと口を開いてくれたと思ったら難しい事を言ってきた。
「お、俺が決めていいんですか?」
「うん。何でもいいよ」
「でも、俺は直器様の遊び相手になれと言われただけで……」
「巳虎が楽しくなかったら、意味ないからいいよ」
俺が楽しいと思っても、直器様が面白くなかったらじいちゃんに恥をかかせてしまう、って思った俺はすげぇ悩んだ。
悩んで悩んで悩んだ末に、海外の童話を読むことを提案した。
じいちゃんに買ってもらったその童話はわくわくするような話で、きっと直器様も興味を持つだろうな、って思った。
けど
「それは……いいよ」
「ど、どうしてですか?」
「内容覚えているし」
「あ、俺も覚えていますよ。ドラゴンが出てきたり……」
「違う。一字一句覚えているの」
「え?」
「さっき巳虎が言ったドラゴンが出てきたところって確か……」
少し思い出すようなしぐさを見せた後、直器様はスラスラと物語を語りだした。
慌てて童話を開くと、内容が完全に一致している。
「凄い……」
「読んだものとか、覚えたものは絶対に忘れないんだ」
「全部……ですか?」
「うん。気持ち悪い……よね?」
多分だけど、大人になった今で考えれば直器様はその驚異的な記憶力で周りに敬遠されていたのかもしれない。
でも、そんな事を全く知らなかった、今思うとバカな俺は
「すげぇ!!俺のじいちゃんみてぇ!!」
「え?」
「じいちゃんも色んな事をいっぱい知っているんだ!!直器もじいちゃんと一緒で色んな事を知っているんだろ?すげぇ!!」
と、じいちゃんと同じように物知りな凄い奴、としか見ていなかった。
もしも当時の俺に会えたとしたら、ぶん殴っている、確実に。
まぁ、そんな俺の反応に直器様は驚いた顔をした。
「怖くないの?」
「何で?……あ」
興奮してため口になっていて、一気に血の気が引いた。
失礼のないように、ってじいちゃんに言われていたのにそれを裏切ったから、じいちゃんに嫌われるって思っている方が強かった。
「も、申し訳ありません!!失礼な態度をとって……」
「ううん、いいよ。敬語より普通に喋ってほしいから。それと、僕は直器じゃない」
「直器じゃない?」
「うん。創一。切間創一って言うんだ。普段は蜂名直器って使えって言われているけど、巳虎は特別」
「俺は、特別……えっと、創一様「創一」……創一、いいのですか?勝手にその名前を呼んでしまうのは……「敬語はダメ」……いけないことじゃないのか?」
本当はダメなんだろうけど、じいちゃんは直器様……創一に「何でも申し付けください」って言われて、敬語はダメ、創一って呼んでって言っていたから言いものかと無理やり納得させていた。
そしたら創一は嬉しそうな顔をして
「初めて、僕の名前を呼んでくれる友達ができた」
って笑った。
笑った顔は無表情な顔よりもやっぱりずっと良くて、俺も何だか嬉しくなった。
創一が家に来て一緒に遊んだ日は1か月くらい続いた気がする。
じいちゃんがいる前ではきちんと直器様、って呼んでいたけどいなくなってから
「創一、今日は何して遊ぶ?」
「ジェンガがいいな。あったよね?」
「おう。持ってくるから待ってて」
と、俺も普通に創一と呼んでいたしため口になっていた。
遊んでいると創一が強くて勝てる事がなかったけど、それでも楽しかったし創一もよく笑っていた。
その後は自然と来る機会が減ってきて、やがて俺は遊び相手役をやる事がなくなった。
別れの挨拶をしなかったけど、何となく会う気はしたからそこまで悲しくなかった。
でも、ひとつだけ言える。
確かに俺は創一に会った、相も変わらず彫刻みたいなキレイな顔をしていた。
しかしまさか創一が賭郎お屋形様になるなんて知らなかったし、知っていたら確実に俺はあんな失礼な態度をとっていなかった、たぶん。
「ねぇ、巳虎」
「何ですかお屋形様」
「……2人きりの時は敬語はダメだって言ったでしょ?それに、創一って呼んでよ」
不満そうに頬を膨らませる創一……お屋形様に俺は苦笑いを浮かべる。
「今は職務中です」
「僕がいいって言っているからいいの」
「しかし……」
「いいったらいいの。……あ、さっき職務中だからって言ったよね?なら仕事終わったら創一って呼んでね。それと巳虎の家に遊びに行くから」
「え?は!?」
「自分が言った言葉に責任持とうね」
そう言って笑った創一の顔はやっぱりいい顔で。
その笑顔を知っているのはきっと俺だけなんだろうなぁ、って思ったらまた嬉しくなった。
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