柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
初めにその歪さに気づいたのは、いつだったか
髪の毛を乾かしている時に、父さんが僕の顔を見つめて
「母さんに似てきたな」
僕の頬を撫でる父さんの手があまりにも優しい手つきだったのが、多分一番最初。
母さんの顔を知らない僕は、僕と母さんのどこが似ているのかなんて分からなかったけど、父さんは僕に母さんの面影を見つけてしまったのが全ての原因だ。
次に気づいたのはプレゼントを貰った時だ。
誕生日じゃないのにプレゼントを買ってきてくれた父さんに不思議に思ったけど、開けてみたら女性物のコートが入っていた。
「白が好きだったよな。ほら、白いコート買ってきたぞ」
「……うん。ありがとう」
別に白が好きなわけじゃなかったのに、父さんはまるで僕の好きな色が白だと言って、くれる物は白が多かった。
どちらかと言うと白は僕に似合わない気がしていたけど、父さんからのプレゼントだったから大切にしていたし受け取っていた。
後に、その日が父さんと母さんの結婚記念日だと知った。
僕が他の色の物を買おうとすると
「白の方が似合うんだけどな。×××も白が好きだろ?」
と、僕の名前じゃなくて、母さんの名前で僕を呼ぶようになった。
それから、歪さは段々と進んでいった。
「ぐはぁ!!×××、お前の好きな料理だろ?具合が悪いのか?」
「父さん、僕は母さんじゃ……「ん?どうした?僕なんて自分の事を言わなかっただろ?」
そう言って僕の顔を覗き込んでいる父さんの目は、真っ暗で濁っていて、僕の事を一切映していなかった。
「×××」
父さんの言葉から出てくる名前は《×××》
死んでしまった、父さんの妻で僕の母の名前。
かわいそうな人だ。
父さん、あなたはとてもかわいそうな人だ。
母さんが死んだ事を拒絶して、僕を《殺した》
そして、あなたは僕を通して母さんを《生き返らせた》
あなたから僕は自由を奪われた。
肉体を奪われた。
精神を奪われた。
本当の僕を、奪われた。
今日も父さんは優しく笑う。
「×××、今度はずっと一緒だ。もう、離れないからな」
「……そうですね、撻器さん」
僕の本当の名前は何だったのだろう?
いや、それとも僕の名前は最初から《×××》?
もう、どうでもいいや……。
ほら、記憶が消えれば、《僕》は完全に《×××》になれるんだから
PR
振り向かせるよ絶対に << | HOME | >> あなたを信じたいんです |
プロフィール
カテゴリー
P R