柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「連れ出してやろうか?」
まるでペットの散歩に連れ出すかのように、何気ない一言を発した長に撻器は目を見開いた。
表情に変化は無く、本気なのか冗談なのか分からない、が意味のない冗談が嫌いなのは知っている。
「……ぐはっ、面白い事を言うな」
「本気にしていないようだな」
「まあな。少し不自由は感じているが、俺を連れ出す事なんて不可能だ」
「体内にある発信機か?」
「あぁ。それがある限り逃れる術は無いさ」
体内に埋め込まれている発信機を取り除くのは、高度な技術と知識がなければ不可能に近い。
そもそもこれほど楽しい組織である賭郎を抜ける気はないと撻器は思っている。
「そうか。残念だな」
「何だ、俺とどこか遠くの地に行きたいのか?」
「あぁ」
「……変なものを食べたんじゃないのか?」
いつもならくだらない、とでも言いそうな長の言葉に恐る恐る尋ねてみる。
不快にも感じていないようで、いつも通りの無表情からは相変わらず何も読めない。
「食べているわけがないだろう。健康管理の一環で食品には気を遣っている」
「バロットなんて気味の悪い食べ物を食べているくせにか?」
「美味いからいいだろう」
「……じゃぁ、頭を打った、とか?」
「そう簡単に人格を変化できるのならお前の頭が陥没するまで俺は殴っていることになるが?」
「ぐはぁ!!それは勘弁だな。……じゃなくて、俺と遠くに行きたいとは本気なのか?」
「まぁな」
「どこに行きたいと言うんだ?」
「そうだなぁ……お前の好きな所に連れて行ってやる」
「は?」
目の前にいる長は実は偽者なのでは、と本気で撻器は疑った。
知り合って日は浅いが、少なくとも自分の都合に合わせることはなかったし、自分も合わす事は無かった。
たまたま都合が合えば会う程度の、友人のような関係だと思っていたのに。
「嫌なら別にいいが」
「嫌ではないが……どうして急に」
「さぁ?」
「さぁ?って……言っておくが、そんな真似をしたら粛清されるぞ?」
「私はそう簡単に殺されるわけがないだろう」
「知っているが……これ以上話しても無駄か」
答えないと決めたら答えないのが目の前にいる男だ、と諦めがついた。
「で、どうする?」
「……行きたい場所はある」
「そうか。なら行くか」
「ぅお!?」
腕をひかれ歩き出されると、慌てて足に力を込めてその歩を邪魔する。
初めて不機嫌そうに眉を寄せた長の顔を見て、本来の彼らしいと不思議と笑いが込み上げる。
「何故笑う?」
「いや……お前が別人かと思ったが、そうやって不機嫌そうな顔を見せるのはいつも通りだと安心してな」
「……」
「そう不機嫌になるな。ちょっと待っていてくれないか?」
「何故?」
「判事にメールでも送っておけば大丈夫だろ。どこまで連れて行ってくれるんだ?」
「お前が望むならどこまでも」
「どこぞのお姫様のような気分だ」
笑いながらその手を握れば握り返されて、短い間しかできないであろう逃避行に、色々と振り回してやろうと考えた。
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