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柚の樹と螢

柚の樹と螢

pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場 不定期に増えます よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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みとみだの日と言う事でね、遅くなってしまったけど書いてみました。
出張先から帰る途中で観覧車を見かけたので、それをテーマに書いてみました。
何故かみだみと風にも見えるけどみとみだです、おそらく


拍手[4回]



立て続けにあった立会がようやく終わり、少し休めると巳虎は思いながらシートに体を預け目を閉じる。
たまたま対戦相手の専属だった弥鱈が同乗しているのが気になったが、疲れている今はどうでもよかった。


「観覧車」

意識が沈みかけそうだった時、弥鱈の呟いた言葉に巳虎は片目だけ開き視線を向ける。
急にどうしたのか、と思い窓の外を見てみると古ぼけた観覧車が見える。
周りが住宅街になっているのに不釣り合いだな、と思いながら弥鱈に話しかけた。

「動いてねぇな」
「そうみたいですね。こんな場所に遊園地があるなんて思いませんでした」
「遊園地……にしちゃぁジェットコースターは見えねぇな」
「もしかしたら無いのかもしれませんね」
「まぁこっからじゃどうなっているのか分からないけどな」

建物や街路樹の陰になってしまい、完全に観覧車が見えなくなるまで弥鱈は視線を外そうとしなかった。

「観覧車、好きなのか?」
「いえ、別に。乗った事がありません」
「そもそも遊園地好きそうじゃねぇもんな」
「行きたいと思ったとしても父が許しませんでしたから。娯楽に時間を使う暇はないと」
「ふぅん」

弥鱈が幼少期について話すなんて珍しいと巳虎は思う。
普段は必要以上の事を言わない弥鱈だが、たまに巳虎にだけはポツリと話す事があった。

「俺はじいちゃんに色んな所を連れて行ってもらったけどな。娯楽を覚えておけって」
「そんな事を言って、普通の場所ではなかったのでしょう?」
「まぁな」

祖父が連れて行ってくれたのは裏カジノなど薄暗い娯楽の方ばかりで、子供らしいところに連れて行ってもらったことの方が片手に数える程度だ。
しかしそんな場所でも威風堂々としている美年を見て巳虎は立会人への道を決めたので、結果的には良かったのかもしれない。

「お互いに子供らしい事はしていなかったみたいですね」
「俺とお前を一緒にすんな。ガキの頃は友達とつるんで遊んでいた」
「へぇ、巳虎さんに友達いたんですか」
「おい」

怒りを感じたが、これ以上疲れたくもなかったのでまた目を閉じる。

「寝ちゃうんですか?」
「うるせぇ」
「私の相手してくださいよ、巳虎さん」
「お前も寝ればいいだろうが」
「眠れないので」
「眠れないからって眠い俺を巻き込むな」

再度声をかけられたが無視をする。
しばらくして、寝たと思ったのか

「観覧車に乗ってみたいんですよ」

独り言のように言った弥鱈の言葉が、何となく耳に残った。




「……こんな時間に何の用ですか?」
「とにかく来い」

深夜、弥鱈は巳虎に呼び出されて車に乗り込む。
こんな時間に呼び出された黒服もかわいそうだ、と思いつつ窓の外を見ていると早朝に通った道だ。

「忘れ物でもしたんですか?怖いからって私を巻き込まないでください」
「するわけないだろうが」

途中で曲がりそのまま進んでいくと、周りが雑草だらけの細い道へと入っていく。
車が停まり、降りろと言われて弥鱈は車から降りた。
蔦の絡まっている錆びついた門を開き進むと、ライトアップされているそれを見上げた。

「……」
「乗りたかったんだろ?観覧車」

塗装が剥げ一部がさびている観覧車がゆっくりと回っている。
見上げている弥鱈は、呆れているような、驚いているような表情だ。

「これ、どうしたんですか?」
「あ?金出して動かした。動かせんの今日だけだけどな」
「こんな事に金を使うなんてバカですか?」
「別にいいだろうが。こんな事に使っても金は腐るほどある」

そんな言葉を一般人に聞かせたら卒倒するか怒り狂うだろうな、と思いながらゆっくりと回っている観覧車を見つめる。

「乗っていいぞ。乗りたかったんだろ?」
「きちんと聞いていたんですか?それでわざわざこんな事を?」
「お前があんな事を言うなんて珍しいと思って」

乗れよ、と軽く背中を叩かれる。
弥鱈は少し考えて、巳虎に視線を向けた。

「巳虎さんも一緒に乗りましょうよ」
「何で?」
「同じように子供らしい事をしてくださいよ。私にはこうして遊ぶ友達もいなかったんですから」
「……まぁ、いいけど」

わざわざ自分の為にこんなバカな事をしたこの人に、頂上についたらキスをする悪戯しても許されるかな、と思いながら弥鱈は巳虎の手をひいた。
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撻器さんと長の組み合わせが大好物な腐女子です
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