柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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浴室から出てきた匠の姿を見た時、撻器はやはりな、とため息を吐いて読んでいた雑誌をとじた。
Tシャツとスウェット姿の匠は、髪は乾かしていないせいか、歩くたびに小さな水滴がぽたりと落ちてフローリングを濡らす。
「……匠、髪を乾かせ」
「すぐに乾くからいい」
「床が濡れる」
「ここは私の家だ」
「ほんのちょっとの事だろ!!こっち来い」
素直にやってきた匠をソファに座らせるとタオルで軽く拭き始める。
「半乾きのまま寝たら髪が痛むぞ」
「ドライヤーを使っても痛む原因になるだろう」
「きちんと乾かしている方が髪のダメージが少ない」
「私は別段気にしない」
「将来ハゲるぞ」
「そんな事にはならない、多分」
そんな軽口を叩き合いながら撻器は水気を取るように、優しくタオルで髪を拭く。
「慣れているな」
「ん?」
「人の髪を拭くの。毎回やってもらっているが痛くない」
「あぁ。創一の髪を拭いてやっていたからな」
「創一君の」
「匠みたいに乾かさないまま俺の部屋に飛び込んできていたんだ」
パタパタと駆けてきて自分の膝の上に座りタオルを差し出してきていた創一を思いだし、撻器は少し微笑む。
匠は大人しく話を聞いている。
「だからこうしていると昔の事を思い出せて楽しいのもあるな。……よし、ドライヤー持ってくるからちょっと待っていろよ」
「分かった」
こうも大人しくしているのにどうして自分で乾かさないのだろうか、と撻器は苦笑しながらドライヤーを取り出す。
癖のある髪に指を通せば柔らかい。
「創一君の気持ちも分からなくもないな」
「ん?どうした急に?」
「どうして髪を乾かさずに撻器の部屋に飛び込んできたのかの理由だ」
「なんだ、言ってみろ」
実は予想はついている。
しかし匠の口から聞いてみたいとも思う。
「創一君の考えと私の考えが違うから真実かどうかは分からないが……」
少し遠慮がちな声で、匠は答えた。
「こうして撻器に触れてもらえる、独り占めできる時間が楽しみだったんだろうな」
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