柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
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拾い物をした
自分と同い年くらいの、男を
「……」
「まぁその……とりあえず傷が良くなるまでは家で安静にしていろ」
拾ってきた男は門倉、と名字だけを名乗った。
南方としては身元について情報を引き出したかったが、現場が現場だった為に情報を漏らす気が無いのだろう、黙り込んだままだ。
下手に刺激したところで面倒が起るだけだ、と問い詰めずに門倉の顔を眺めていた。
門倉を拾ったのはとある路地裏。
普段なら全く気にかけないがその日は何か異様な気配を感じ、様子を見るだけだと足を踏み入れた。
結果、ただの不良の喧嘩でも始まっているかと思ったその場所では、違法改造されたスタンガンや銃が散乱し、なおかつ所持者だったであろう男達が周りに倒れており、傷だらけの門倉がやってきた南方を睨みつけていた。
何かしら裏に精通する人間だと思った南方は、治療兼監視の為に自宅へと連れ帰ることにした。
途中何度か抵抗されたが、これ以上体力を削ぐのは得策じゃない事と南方が警察署や病院に行く気が無いのが分かると、その後は大人しくその体を預けていた。
とある筋で知り合った医者に診せると、本当なら病院に連れて行った方がいいが治療は終わった、しばらく安静との診断を出された。
敵意はない意味を込めて笑みを浮かべ、門倉に話しかける。
「面倒なケガが無くてよかったな」
「……のぉ」
門倉が口を開いた。
枯れかかった声なのは、疲労によるものなのだろうか。
「どうした?」
「お前、警察に言わんつもりか?」
聞きなれた方言に同郷の者か、と少しだけ懐かしさを感じる。
「俺が警察じゃから言わなくても問題ない」
「お前……同郷のモンか?」
「年も近いし、意外とどこかで会った事あるかもな。まぁ今は休んでいろ。後で事情聴取はさせてもらうが」
「……悪い」
しばらく泊めさせてもらう、と言って門倉はすぐに眠りに落ちた。
後で事情聴取、と言ったが、きっとこいつは傷が治れば勝手に出て行ってしまうのだろう。
しかしそれでもいいか、とそう思った。
そう思ったのだが
「南方、今度出かける時に煙草買ってきてくれんか?」
門倉はいまだに南方の家に住み続けていた。
一時は姿を消したが、深夜に帰って来たかと思うと「しばらくここに住ませてもらう」と荷物を持ち込んできた。
呆気にとられている南方の許可を取らず荷物を整理し終わると「生活費は出す、その他もろもろの事もある程度は従う。後は何も聞くな」と言って住み着いた。
「……なぁ、門倉」
「何じゃ?」
「何で出て行かないんだ?」
「あ?出て行ってほしいのか?」
「いや、そう言うわけじゃないが……お前警察にはあまり知られたくない身の上なんだろ?」
「まぁな」
「だったら俺の元から消えてるだろ。俺警視正だぞ?」
「そうじゃったな」
「そうじゃったな、って」
「んな事言っても、お前は俺から情報を引き出そうとはせんし、それに追い出す気もないんじゃろ?」
門倉の一言に南方は黙り込む。
確かに、不思議と追い出す気にはなれない。
同郷の者をむげにできないのか、それとも
「家賃払ってもらっている以上お前に文句はないからな」
「ははっ。それはどうも」
門倉が愉快そうに笑った。
「煙草は自分で買え」
「どうせ仕事で外出るんじゃからついでに買ってくればいいだけじゃろ」
「人をパシるな」
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