柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「たくみお兄さん、おきて!!」
小さな男の子の声が聞こえる。
……ん?男の子?
目を開ければ見慣れない部屋と、男の子。
「……創一君か」
あのまま私も寝てしまっていたようで、外はすでに日が沈んでいた。
「おはようございます」
「おはよう。起こしてくれてありがとう」
「いいの。ごはんいっしょに食べようって父さんが」
「せっかくで悪いが、そろそろ帰らないといけないんだ」
姉の夫とは言っても、初対面で今後は関わりが無い人だ、このまま長居するのも失礼かと思い起き上がる。
すると創一君が泣きそうな顔になった。
「いっしょにごはん食べてくれないんですか……?」
「……」
……駄目だ、子供を泣かせていいわけがない。
義兄には悪いが、夕飯をいただいたらすぐに帰ろう。
「ぐはっ、ちょうど出来たところだ。座ってくれ」
「すみませんお手伝いもせずに」
「気にするな。飲み物はお茶で構わないか?」
「はい」
どうやら使用人ではなく義兄が作った料理のようで、しかし見た目は完璧なものだ。
席につくとその隣に創一君が座った。
「何だ、父さんの隣じゃないのか?」
「たくみお兄さんのとなりがいいの」
「ぐはぁ!!創一がそんな事言うなんて、すっかり懐いているなぁ」
「そうなんですか?」
「普段は滅多に表情を変えないしワガママも言わないからな」
創一君と目が合うと、ニコッ、と笑った。
やはり姉に似ているな、と思うと両手を合わせる。
「「「いただきます」」」
初めてやる食事の挨拶は、ちょっとだけ嬉しかった。
「匠はこれからどうするんだ?」
創一君の口元を拭っている時に、義兄が急に問いかけてきた。
「ありがとうたくみお兄さん」
「どういたしまして。あの、どうするとは?」
「今後の生活についてだ。就職先か進学先が決まっているのか?」
「はい。その事については問題ありません」
「住む場所は?」
「今借りているアパートがあるので問題ありません」
「家賃って高いだろ?バイトをしていても自由に金が使えないじゃないか」
「少額ですが預金はしているので不自由な事はありませんが……どうしました?」
「単刀直入に言うと、家に住まないか?」
「……は?」
思わず箸を落としそうになり、慌てて創一君が私の箸を掴んだ。
「いやあの、私の生活については何の問題もありません」
「1人暮らしは大変だろ?」
「それはそうですが……しかしそのようなお気遣いをされるような事は」
「女房が言っていたんだよ。『匠の事を頼みます』って。だから俺はその約束を守るだけだ」
「姉さんが……。でも、俺は正直言って今まで音信不通でしたし、今の生活でも……」
断ろうとするが、義兄は引く様子が全くない。
そんな時、創一君が義兄に尋ねた。
「たくみお兄さんがかぞくになるの?」
「いや、ちが…… 「そうだぞ~。創一はお兄ちゃんができて嬉しいだろ?」
「うん!!たくみお兄さん、よろしくお願いします」
……卑怯だ、子供を使うなんて。
「しかし、家の荷物や色々手続きが……」
「それなら問題ない。寝ている間に終わらせておいた」
「はぁ!?」
「俺の権力を少し使えば簡単にできるんだ」
何だこの人、最初から逃げ場を奪っていたのか……。
「観念しろ、大人しく俺達の家族になるんだな」
そう言って悪戯っぽく笑った義兄に、俺は「よろしくお願いします」と頭を下げた。
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