柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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撻器さんの奥さんと兄弟関係な長という捏造設定です。
シリアス全開なプロローグ的なものですが、ここから先がドロドロしいものかほのぼのしいものかは全く決めていません。
ドロドロにするとしたら墓場の方で書くと思いますのでご容赦を
シリアス全開なプロローグ的なものですが、ここから先がドロドロしいものかほのぼのしいものかは全く決めていません。
ドロドロにするとしたら墓場の方で書くと思いますのでご容赦を
「気持ち悪い」
「本当にこの子は俺達の子なのか?」
何度両親に自分の存在を否定されたのだろう。
数えたところでどうしようもないが、否定されなかった日は無かったと思う。
裕福な家に産まれた私は、物心つく前から座敷牢に入れられていた。
原因はただ1つ、左目の下にある体毛。
なぜそうなったのかは私自身も両親も知らない。
ただ異常がある子供を認めたくなかったのだろう、周囲には死産だった、と伝え私を監禁していた。
そのまま殺せばよかったのに、自分の手を汚したくないとは滑稽な話だ。
私を汚物のように見ていた父と母に値する2人から与えられたのは、愛ではなく暴力。
何かあれば殴られ蹴られ、食事と言えば残飯か腐った物しか与えられなかった記憶しかない。
何度も自分が生きる価値はないものだ、と思っていた。
ただ
「ごめんなさい……守れなくてごめんなさい、匠」
年の離れた姉だけは、私の事を愛してくれていた。
守れなくてごめんなさい、と何度も言っていたが、姉は両親の目を盗んで私に治療を施し、温かい料理を与えてくれた。
勉強も教わったおかげか、あの家を出てから私が文字の読み書きで苦労したことは一度もない。
「いつか必ず、匠をここから出してあげるから」
「誰が何と言おうとも、私があなたを幸せにしてあげる」
姉はいつも優しく、温かかった。
ただ、姉といる時間は長くはなかった。
年の離れた姉は成人になった直後、とある名家に嫁ぐ事になった。
その話を聞いた時、恐らく私は姉が嫁いだ後殺されるのだろうな、と思った。
その日の深夜、姉は私の元へやってきて、鍵を開けた。
そして私に荷物を渡した。
「匠、どこか遠くに逃げて。嫁いでしまったら私はあの家に戻れないの。だから、逃げるなら今日しかないの」
「遠く……」
「……本当なら、あなたと共に逃げたかった。でもそうしたらすぐに捕まってしまう。……本当にごめんなさい。あなたを幸せにしてあげるって言ったのに、ごめんなさい」
泣きながら抱きしめてくれた姉には何の恨みも怒りもない、むしろこうして私を逃がしてくれただけでもありがたい。
ただ、恐らく姉とはもう一生会えなくなるのだろうと思って、悲しくなった。
それからは生きる為に必死になっていた。
姉が渡した荷物の中には新しい戸籍が入っており、それから私は《真鍋匠》として生きた。
両親に見つかるのかと何度も思ったが、姉が名家に嫁いだ為に家が安泰しているからだろう、何も無く、時に頬を奇異の目で見られたが普通の人のように人生を歩んだ。
姉と連絡を取りたくなったが、そんな事をすれば迷惑になるだけだと諦めたが、きっと幸せに生きているのだろう。
幸せに生きていてほしいと願った。
しばらくして、テレビで聞いた覚えのある名前が読み上げられているのを聞こえた。
何となく見てみれば、あの時から少し雰囲気が変わったが、懐かしい姉の顔がテレビに映っていた。
一体どうして?と思えば
『本日未明、居眠り運転による事故の為蜂名―――』
それは、二度と生きて会えない事を知らせるニュースだった。
そして今、私は遠巻きに蜂名家の葬儀場を眺めていた。
葬儀は家族葬なのか、私が参列者として入れる様子はない。
本当なら姉に「ありがとう」と伝えて見送りたかったのだが、私には姉と兄弟だと証明するものを持ち合わせていない。
「……ありがとう、姉さん」
これ以上この場にいても不審に思われる、と葬儀場を後にした
「おい」
ふいに肩を掴まれた。
振りかえれば、見知らぬ男が私の肩を掴んでいる。
見た所、姉と同じくらいの年のようだ。
その男は私の顔を見て、少し驚いているような気がする。
「何か?」
「お前が……匠か?」
「……なぜその名を?」
「あいつがよく言っていた。『守れなかった大切な弟がいる』って」
姉はずっと私の事を忘れていなかったようだ。
それが嬉しくもあり、申し訳なかった。
「来い、式に参加しろ」
「……私が参加すれば色々体裁が悪くなる」
「何を言っているんだ。あいつのたった一人の弟なんだろ?きちんと別れを済ませて、あいつにお前の姿を見せて安心させてやってくれ」
「……」
強引に腕を掴まれ、式場へと歩かされる。
乱暴で力強い手だが、姉と同じく温かく優しいものだった。
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