柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「僕ずっと蜂名でいようかなぁ」
創一の言葉に丈一は嫌な予感を感じる。
彼の自由奔放ぶりや突発的な行動は父譲りなのがやっかいなのだ。
「急にどうしてそのような事を?」
「蜂名の方が気が楽だから」
「そうですか?」
「うん。お付がいなくても行動できる日が多いし、それに髪のセットもしなくて済む」
毎日この髪だけ出して整えるの大変なんだよね、と長くなっている一房の髪を撫でる。
物理法則を無視しているその髪だけを残してオールバックにするのはたしかに面倒そうだが、丈一は控えめに答えた。
「しかしお屋形様を楽しませることができるのはこの組織だけです」
「まぁ、そうだね。遊んでくれる人は蜂名の方ではいないし」
ルービックキューブを瞬時に直すと丈一に投げ渡す。
しっかりと受け取り、それをハンカチに包めば持っていたはずのルービックキューブが消えた。
「腕を上げたねぇ丈一。僕が言わなくても手品できるようになるなんて」
「ありがとうございます」
「うーん、自由と遊んでくれる人かぁ……悩むね」
どう返答すればいいのだろうか、丈一はまた返答に悩む。
棟耶辺りならバッサリと答えるのだろうが、創一に甘い部分がある丈一は強く言うのは抵抗がある。
「蜂名としては自由でいる時間が多いかもしれませんが、それは完全に仕事を終わらせなければ手に入れる事はできませんよ。その点お屋形様でしたら、周りの者がサポートできます。内容によってはお屋形様がやらねばいけないこともありますが」
「まぁ……そうだよねぇ。楽あれば苦あり、苦あれば楽ありが当たり前か」
やる気がある時だったら問題ないんだけどねぇ、と頬を机に押し付ける。
「この執務が終われば紅茶を飲みましょう。茶菓子も用意いたしますよ」
「ん」
やる気になったのか、放り投げていた書類を手に取り目を通し始めた。
やれやれ、と思いながら紅茶の用意をしようとそばを離れようとすると、書類の束を渡された。
「……はい?」
「丈一、頼んだよ」
「え?」
戸惑う丈一に、創一は体を大きく伸ばし立ち上がる。
「サポートしてくれるんでしょう?それは僕がやらなくても問題ない仕事だし、僕がやらなきゃいけない仕事はさっき終わった。今から蜂名として自由を満喫してくるから頼んだよ」
「ちょ、お屋形様!!」
髪を乱したかと思うと窓から飛び降りた創一……蜂名を慌てて丈一は追いかけようとするが、すでにその姿は消えている。
「……本当に好き勝手にやる方だ」
大事になる前になんとかしないと、と渡された書類を握りしめた。
自由を手に入れた蜂名はと言うと、特に遊ぶところが思いつかず、人通りが多い道を歩いている。
少しだけ寒くなってきた風は秋の始まりを告げているようで、その風に乗せられたのか金木犀の香りがふわりとくすぐる。
「うーん、誰かに面白いところを聞けば良かったかなぁ。でも今の僕は蜂名直器だし……どうしようかなぁ」
それとも追いかけてきた人と鬼ごっこでもしようかと、金木犀の咲いているであろう場所を探すために進路を変え歩き出した。
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