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柚の樹と螢

柚の樹と螢

pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場 不定期に増えます よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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まっかちんさんお誕生日おめでとうございます!!
そんなわけで貘ハルです、ファンタジーな設定になっております、そして甘くない……orz
それでもよろしかったらどうぞ


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「貘さん貘さん」

ハルが少しだけ困ったような声で貘を呼ぶ。

「どうしたのハル?」
「僕の胸、空いちゃった」
「空いちゃった?」
「うん」

貘が振り向くと、上半身裸のハルが立っている。
華奢に思ったその体にはしっかりとした筋肉がついており、着やせするのか、なんて思いながら胸を見る。

「ありゃ、本当だ」

左胸、心臓があったであろうその部分
そこにはぽっかりと穴が開いていた。


近年増えている、体のどこかに穴が開く病
しかし穴が開いたとしても生活に支障があるわけではない。

「心臓が無いのに生きているなんて不思議だよ」
「一体どうすればいいんだろうねぇ」

穴へ手を出し入れする貘と、心臓の行方に思いを馳せるハル。

「何かで満たせばいいのかな?」
「何かって何を?」
「分かんない。でもこのまま何もないの嫌だなぁ」
「それもそうだねぇ。……うーん」

一体何を満たせばいいのか、と貘は腕を組み考える。
ハルも一緒になって考えるが、特に何かいいものが思いつかない。

「何も思いつかないし、散歩してみる?外になら何かあるかもよ」
「うん。服を着れば穴も見えないもんね」

このままホテルの中にいても変わらない、と2人は鍵を持って外へ出た。



「どう?何かいいのあった?」
「うーん、特には思いつかないや」

2人並んで道を歩く。
店が入ればその中に入って吟味していたが、気に入ったものはなかったようだ。
そんな風に当てもなく歩いている2人の手にはどこかで買ったのか、甘そうなクレープが握られていた。

「美味しいね、これ」
「ハルが食べたがるのは意外だったよ」
「初めて見たんだ。貘さんも一口どう?」
「じゃぁ、ちょっとだけ」

一口食べると、甘いねと貘は笑う。
ハルも一口また食べてそうだね、と笑った。


「見つからないねぇ」
「そうだねぇ」

ホテルに戻った後もくまなく探してみるが、見つからない。
さてどうしたものかと考えていると

「もういいよ、貘さん」

とハルが言いだした。

「いいの?」
「うん。空っぽになっちゃったのは仕方がないよ。無くしちゃったものは無くしちゃったんだから」
「ハルがそれでいいって言うなら問題ないんだろうけど……あ」

ぽん、と手を叩く貘に、ハルは不思議そうな顔を見せる。
貘は上着を取ると、またハルの手をひく。

「また外で探すの?もういいってば」
「無くしたものを探すわけじゃないよ。素敵なものを作ろうよ」
「素敵なもの?」
「さっきみたいにさ、俺とハルで色んな所に行って色んなもの食べて色んな事で遊んで、そうやって色んな事をして俺とハルの思い出で胸の穴を満たせばいいんだよ」
「……貘さんと僕の、思い出で」
「うん。だから早速思い出を作りに行こうよ」

再度手を引くが、ハルはまだ動こうとしない。

「貘さん、満たされるまでずっと一緒に、僕と色んな思い出を作ってくれる?」
「もちろん。一緒に楽しい事をしようよ」
「うん」

小さく頷くと、逆に貘の手を引き寝室へと向かう。

「ハル?」
「今日はでかけたから、お昼寝にしよう」
「……もう、ハルはワガママだね」

いいよ、とベッドに寝転がる貘の隣に、ハルはすり寄る。

「起きたらさ、明日からどこに行こうか色々考えよう」
「いいよ。ハルの行きたい所ならどこまでも」
「ん……」

温かい体温と隣から聞こえてくる鼓動に、ゆっくりと睡魔が押し寄せてくる。

(このまま空っぽでもいいかもなぁ)

貘さんとずっと一緒にいられるなら、満たされなくてもいいのにと、そんな事をハルは思いながら眠りに落ちた。
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自己紹介:
撻器さんと長の組み合わせが大好物な腐女子です
妄想をいただけると勝手に書いていることもあります

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