柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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雨が降っている。
ざぁざぁ音を立てながら空から降ってくる雨粒は、地面へ染み込んでいき、次第に水溜りとなっていく。
そんな雨から逃れるように、軒下に貘は立っていた。
水分を吸って重く垂れている前髪をかきあげると、遠くから足音が聞こえてくる。
見れば傘を差している梶が走ってやってきた。
「……貘さん!!」
「ごめんね梶ちゃんこんな雨の中呼び出しちゃって」
「それは別に大丈夫ですよ。それよりも、こんなに雨が降るなんて思わなかったっすね」
「本当だよ。お陰様でびしょ濡れだ」
差していた傘を閉じて貘の隣に立つ。
「すいません、ハンカチかタオルも持ってくれば良かった……」
「いーよ、急に呼び出したのは俺だし。傘はその一本だけ?」
「え?……あっ!!」
「……梶ちゃんって意外と間抜けなところあるよね」
貘に苦笑されると、すみませんと小さな声で謝り、顔を赤くしてうつむいた。
「……ックシュ、」
「あ、大丈夫っすか?」
「平気へいき、ちょっと寒いだけ」
「風邪ひいちゃいますよ!!はい、これ良かったら」
梶は着ていた上着を脱ぐと貘に渡そうとする。
しかし貘は受け取ろうとしない。
「そしたら梶ちゃんが風邪ひいちゃうよ」
「俺よりも貘さんが風邪ひいちゃいそうじゃないですか」
「駄目駄目、梶ちゃんも倒れたらどうするのさ」
「俺は体丈夫な方ですから大丈夫ですよ」
「……梶ちゃん、俺の言うこと聞けないの?」
貘が一歩近づくと、反射的に梶は一歩後ずさる。
軒下の狭い空間では、すぐにその背はシャッターにぶつかりガシャンと音を立てた。
ずい、と寄せられた目に射すくめられたかのように体が動かない。
「ば、貘さ……」
「梶ちゃんは俺のものなんだから、俺の言うことはちゃんと聞いて?」
いつもとは違う声に、少し眩暈を感じた。
「は、い……」
「ん。いい子」
よしよしと頭を撫でられれば、呪縛が解けたかのように体が動いた。
「は、早く帰りましょうか。マルコも待っていますし!!」
傘を広げて2人が入る。
どうしても肩がはみ出してしまうと、貘が梶へと傘を傾けた。
「俺はもう濡れているから梶ちゃんは濡れないようにしなよ」
「本当にすいません……」
「いいよいいよ、この借りは帰ったら返してもらうから」
「あ、分かっていますよ。ちゃんとお風呂の準備とか風邪引いちゃったら看病しますからね!!」
「違う違う、そうじゃなくてさ」
ぐいと顔を引き寄せられると、ちゅっ、とリップ音を鳴らす。
冷たい唇の感触に梶の顔は真っ赤になる。
「な……っ!?」
「マー君はホテルにいないよ。カールと伽羅さんに頼んで外出しているから。……だからね、梶ちゃん」
こういう時って人肌で温め合うのがいいんだよ?
雨音が、どこか遠くなった気がした
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