柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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今日はどうもついていない
朝からコーヒーを飲もうと思えばマグカップの取っ手が取れて壊れ、仕方がなしに自動販売機で買えばいつも飲んでいる物とは別のコーヒーが落ちてきた。
仕方がなしに飲んだが、やはり愛飲している物じゃないせいかあまり調子が出ない。
その上後輩の犯した重大なミスのせいで、自分が午後から取引先へと出向かなければいけないとなれば、今日は何かついていないんじゃないのかとため息を吐いた。
「しかたがねぇ、コーヒー買うか、それともどっかで飲むか……」
こうもイライラが続くとコーヒーが飲みたくなる。
摂取量は少し問題があるラインだが、飲めば集中力が増すので重大な仕事の前には必ず飲んでいた。
コンビニで買うか、それともどこか店で飲もうか少し考えていたとき、白と黒の人影がふと目にとどまった。
「あ」
その人物を個人的に知っている。
嘘喰い、斑目貘と元零號立会人、伽羅
【仕事】をしている以上、耳に何度か入って来たことがあるその2人は、どうやら視線に気づいたのか、俺を見てきた。
「……お前、あの時の」
どうやら伽羅さんは、以前に出会ったのを覚えていてくれたようだ。
あの日は大勢の人に会っていたはずだから自分の事を忘れていたとしてもおかしくないのに、と少しだけ感動した。
「どうも。覚えていてもらえて嬉しいです」
「まぁ、何度も近くで見かけたからな」
「なるほど」
「へぇ、君があの日に会った人の1人なんだ」
貘さんの方が俺に笑顔を向けた。
キレイな顔をしているが、どこか腹黒いものと言うのか、自分を牽制させようとしているような笑みだ。
「えぇ、まぁ。正直会えるとは思っていませんでしたし、覚えていてくれているとも思っていませんでしたけど」
「お前が一番騒いでいたから嫌でも覚えている」
「あはは、良かったね君」
「はぁ……」
伽羅さん、嬉しいけどあまりそんな風に言わないでくれ。
貘さんの笑顔が更に怖くなった気がする、何かチクチクと刺さるようなオーラが出ているから。
「そう言えば君はこれからどこかに行くの?」
「え?あぁ、まぁ。これからコーヒーでも飲もうかと。まだ昼休み中なので」
「コーヒー?好きなの?」
「そうですね。いつも飲んでいます」
「そうなんだ。そしたらおすすめがあるよ」
そう言ってメモ帳から紙を一枚ちぎると、サラサラと走り書きで何かを書いて渡された。
見てみると店の名前と簡単な地図が書かれている。
「おすすめのお店だから行ってみるといいよ」
「ありがとうございます」
「おい、嘘喰い。そろそろ行くぞ」
「はーい。……ごめんね何か呼び止めちゃったし俺ばっかり話しちゃったみたいで。伽羅さんとも話したかったでしょ?」
「いえ。会えただけでも嬉しいので。これからこのお店に行ってみますね」
「そう。じゃぁね」
貘さんは伽羅さんの隣へと戻ると、2人は歩き出した。
ふと、貘さんがこっちへ振り向いたかと思うと
『伽羅さんは、渡さないよ』
と声に出さずに口を動かした。
少し驚いて、俺も笑って返した。
『奪えませんよ、お幸せに』
貘さんに伝わっただろう、悪戯っぽく笑って手振って行ってしまった。
「……さて、行こうかな」
少しだけ、足取りが軽くなった気がした。
しかし、俺が貘さんに案内された【百鬼夜行】で死ぬほどまずいコーヒーを飲まされる羽目になるのは、もう少し後の話
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