柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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人の人生なんて一瞬のうちに終わるくらい儚いはずなのに、1人だけ一際力強く輝いている男がいた。
「お前が化け物か?」
「ひどいなぁ、同じ人間だけどねぇ~。まぁ、そうなっちゃうかな?」
わざわざ底辺の中の底辺であるスラムでひっそりと生きているのに、時折こうやって俺を化け物扱いした人が俺を殺そうとやってくる。
その度に痛い思いして不死だって見せつけてあげて、そして相手が逃げるのを見送っていた。
この男も同じか、と思ったけど、その目には敵意は無いような気がする。
それに今までの小物とは全く違い、目の前の男は完全に強者としての風格がある。
「変わった男だな。しかし化け物って言うからどんな奴かと思ったが……もやしみてぇな男じゃねぇか」
「何それ。もっと化け物らしい外見がよかった?」
確かに虚弱体質ではあるけどね、きっと不死の方にエネルギーが回っているから体力が無いんだろうと推測している。
俺だって好きでこうなったわけじゃないから外見の事言われるは嫌だけど。
「んなもんどうだっていい。で、お前が不死だって証拠は?」
「あんたみたいな人が毎回毎回来るたびに言われるけどさぁ、俺だって証拠見せるたびに痛い思いすんの嫌なんだよね。一緒にいてくれれば自然と俺が不死である証拠を見せられるけど、どうする?」
「お前の傍にいろって言うのか?」
「まぁ、そういう事」
死なないからと言っても痛い思いするのは勘弁。
だいたいこの言葉で逆上した相手に殺されそうになって、結果的に証拠を見せることになるんだけどね。
「……別にいいだろう。退屈しなくてすみそうだ」
「へ?」
「お前、名前は?」
「え?あぁ……確か、貘。あんたは?」
「伽羅って呼ばれている」
「じゃぁ伽羅さんね。えっとその……よろしく?」
白髪に碧眼、そして不死の呪いを受けた俺は人に恐れられるだけの存在のはずなのに
「……鉄骨が頭を潰したってのに、生きている。本当に不死なんだな」
「イタタ……これで証明したことになるけど、どうする?」
「そうだな……明日の飯は肉でも食うか」
「うわっ、いい趣味してるね。……そっか、明日も一緒にいてくれるんだ」
伽羅さんはそんな俺の傍にいてくれた。
互いに依存しているわけじゃない、でも傍にいるその存在は胸を焦がし脳裏に焼き付き、俺にとって初めての唯一の人間に思えた。
しかし俺と伽羅さんの間には、寿命という名の決して越えられない壁がいつまでも存在していた。
「伽羅さん……?」
「ちっ、んな顔すんじゃねぇよ」
「だって!!そんなに血が流れてるなんて……医者を呼んでくる!!」
「お前じゃ医者呼ぼうとしたって逃げられるだけだろ。この位の傷なら平気だ。落ち着け」
伽羅さんが血を流すたびに、この人をいつ失ってしまうのか、と初めて人が死ぬのを恐れた。
「……悪いな、貘。逃げろよ……」
「謝るくらいならさ、生きてよ。俺の為にじいちゃんになろうと何だろうと、生きてよ」
あっけないくらい、短い間で伽羅さんは死んでしまった。
研究対象にされそうになった俺を逃がそうとして死ぬなんて馬鹿じゃないの?
そんなことしなければさ、伽羅さんは死ぬ事なんてなかったのに。
「ねぇ、伽羅さん。俺を1人にしないでよ……」
初めて俺が好きになって、初めて不死である事をこんなに憎んでいるのに。
最初の恋は、こんなにもあっけなく実らないで終わってしまった。
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