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柚の樹と螢

柚の樹と螢

pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場 不定期に増えます よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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長が少し女々しいので注意。
そして完結できるのかどうか……ぶっちゃけ私にも分かりません←


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長が1日の殆どを眠るようになった。
それでも撻器は賭郎の仕事をこなし、そして病室に向かうと目覚めるのを待つ、そんな生活を続けていた。
書類関係なら病室に持ち運んで仕事をし、立会勝負なら早く終われとその経過を見守り、長が起きれば洗面器を渡し、僅かな時間でも話していた。

「……こっちが夢のようだな」

眠そうな声で、焦点の定まっていない目で天井を見上げながら長は呟く。
撻器は握っている手に力を込める。

「何を言っているんだ。こっちが現実だ。分かるだろ?」
「夢の中では……いつも通りで……撻器と、色々な場所に行っているんだ……」
「治ればどこにでも連れて行ってやる。どこに行きたい?」

強く握りしめているはずなのに、長の眼は虚ろなままだ。

「夢の中だと幸せ……なんだ。こんな……めいわく、かけていなくて……お前に振り回されて……楽しく、て……」
「迷惑なんて思ってないぞ。そう思うな」
「……きっと今までの、罰……ケホッ」

また宝石を吐き出しはじめると、今までよりも宝石が大きくなっている。
洗面器から零れ落ちてもまだ止まる気配がない。

「長!!」
「…………私は、あと何回なんだろうな?」

撻器に問いかけるように呟き、またその目を閉じる。
何もできず、ただこうして衰弱していく姿を見る事しかできない自分に、その手をただ強く握りしめる事しかできなかった。




「父さん」
「……創一か。どうした?」
「またあの人のところに行っていたの?」

書類を提出する為に本社に戻ると、創一が撻器に問いかけた。
その目はその行為を責める為ではないのがうかがえる。

「あぁ。ダメか?」
「ダメなんて言わないよ。これを渡そうと思って」

差し出してきたものは、束ねられた書類。
仕事のものか、と思ったが、内容を読んでみると長の奇病に関してのものが書かれていた。

「僕が知る限りの医療関係者に症状と検査結果を送った返事と、あの病気に関連してそうな資料を集めておいた。参考になるかどうか分からないけど、もしかしたら、って思って。本当なら私情を挟むべきじゃないけど、できる限り立会の方には出なくていいようにしておく」
「……悪いな、創一」
「いいよ。父さんが大切な人を失った姿、もう見たくないから。諦める事だけはしないでね」
「あぁ、もちろん。諦めるわけないだろ」

今までと同じで、読んでも何もヒントを得られないかもしれない、ただ時間を無駄にするだけかもしれない。
それでも、やらなければ何も始まらない。

「……頼む、少しでもいい。何か分かれば……」




 寝不足な目をこすり、いつものように長のいる病室へ向かう。
入ってみると珍しく起きているようで、撻器はすぐに笑顔を浮かべた。

「長、今日は起きて…… 「帰れ」

驚くが、すぐに笑顔を戻す。

「どうした?何かあったのか?」
「いいから帰れ。もう私の前に現れるな」
「ぐはぁ!!俺がそう簡単に諦めると思っちゃ…… 「いいから帰れ!!」

睨み付けたその目は以前のように力強く、高揚感で胸が高まるのを感じる。
撻器はいつもと同じ笑みを浮かべて、優しく問いかけた。

「どうした?」
「もうお前の顔を見たくないと言っているのが分からないのか?」
「いや、言っている事は分かるが俺が納得できる理由を言え理由を」
「……お前の顔を見たくない。それだけだ」
「ぐはっ、前から言われている事と変わらないじゃないか。そんなんじゃ俺は諦めないぞ~」
「いい加減にしろ!!今の私は、原因が分からないまま何の治療法もなく、ただ宝石を吐き出して眠っているだけだ。……それでもお前はここに来てくれる」
「好きな奴の為ならそんな事当たり前だろ」
「大切に思ってくれているからこそ、もう顔を見たくない。私は、何もできずにただ衰弱して死ぬだけの人間だ。これ以上、お前の前で醜態を晒すのは嫌だ。だから……頼む、もうここには来ないでくれ」

弱弱しい声でも、哀願する声ではなく、以前と同じ力強い声だった。
だからこそ、長が本気で願っている事を理解した。

「……1人にさせてくれ」
「そうだな。今は落ち着きたいだろうし、今日は帰る」
「明日から来るなよ」
「馬鹿な事を言うな。そんな簡単に諦める男なら、お前の事を好きでいるわけないだろ?……もう少し待っていてくれ。必ず、助ける」

根拠もない、気休めな言葉を言っても、長が喜ぶわけない。
そのはずなのに

「…………ありがとう、撻器」

本人の口から出てほしくなかった、弱々しい声が聞こえた。




その日の深夜、連絡が入った。

「例の病気についてなのですが、実はとある民俗資料に似たような症例のものが書かれていると……」

撻器はすぐに黒服に車を手配させ、その資料がある民俗館へと向かう。
その道中で、また電話が鳴り出した。
連絡先は、病院。

「俺だ」




「例の患者ですが……呼吸停止状態になり、今ICUに移動しました。今後の治療方針と面会についてですが…………」

目の前が真っ暗になる、電話からの音が遠くに聞こえる。
その中で、コロリ、コロリと、あの赤い宝石が転がった音が聞こえた気がした。
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女性
自己紹介:
撻器さんと長の組み合わせが大好物な腐女子です
妄想をいただけると勝手に書いていることもあります

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