柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「課長はいったいどこまでほっつき歩いているんだか……」
「雨が降ってきているからまさか濡れ鼠にでもなっているんじゃねぇの?」
「あぁ、折り畳み傘を持たせているから大丈夫だよ」
「ならいいけど」
これから大切な会議があるのだが、密葬課課長である匠が帰ってこない。
別にいなくても問題がないのはないのだが、一応課長がいないまま会議をする訳にもいかないのでひたすら待つ。
密葬課へと近づく足音が聞こえてきた、恐らく匠が帰ってきたのだろう。
時計を見ればまだ十分に時間の余裕がある。
傘を差していたとはいえ、少しは濡れているだろうと花はタオルを取り出して匠を待った。
そして
「汚れちゃった」
その姿を見て花と箕輪は絶句する。
やっと帰ってきた匠は、なぜかずぶ濡れだった。
ポタポタと髪から雫が零れ落ち、スーツはもちろんのこと、なぜか革靴とズボンは泥まみれと言う、とてもではないが会議に出られるような恰好ではない。
「な……あたしが渡した傘を持っていたよね?」
「うん。ちゃんと差していた」
「だったらどうしてそんなに濡れているんですか」
「水たまりがあってな、そこをジャンプして越えようとしたら失敗しちゃった」
そしたら汚れちゃった、と自分の格好を見て匠は言う。
呆気にとられる2人だが、すぐに花は怒鳴った。
「これから大事な会議なのに何やってんだい!!」
「いけると思ったんだが意外に広くて……ホビロンは死守した」
「ホビロンより守るもんがあるだろ!」
「あぁ、ちゃんと書類も死守した」
懐から書類を取り出すが、微妙に濡れていた。
「それもそうだけど……違うだろ!!と言うよりもなんでそのままで持っているんだい!?本来なら簡単に持ち運んでいい書類じゃないんだから鞄の中に入れておけって……「おーい、そろそろ時間じゃねぇの?」
「……ったく!!とにかくこれで体を拭きな!!早くしないと間に合わなくなっちまう!!」
「はーい。……タオル1枚だけで綺麗になるかな?」
「つべこべ言ってんじゃないよ!!」
何とか見た目を整え会議に出席をすると、まず最初に書類を渡した。
すると天真は眉をよせる。
どうして?と匠は少し首をかしげ、やはりなと花と箕輪は思ったが黙ったままだ。
「何でこの機密書類微妙に濡れているんだ?」
「雨の中の移動があったので」
「え?鞄に入れていたわけじゃないのか?しかもこの機密書類泥がはねているんだが……」
確かに泥がついている。
「あの、それで提出って……」
「こんな状態の悪いものを提出なんて認めるか。再提出だ」
本日中にな、と言い放ち天真は出ていく。
残されたのは、落ち込んでいる匠と、そんな匠を睨みつけている花と箕輪。
嫌な沈黙が続き、そして匠がポツリと呟いた。
「守れてなかったか……」
「「この馬鹿!!」」
「また書き直さないといけないのか。バックアップある?」
濡れた書類とパソコンを交互に睨みつけながら匠は遅いタイピングで打ち直す。
「自業自得だよ、自分で何とかしな」
「バックアップは情報漏えいの危険性があるから残すなと言ったのあんただろ」
さすがに今回の原因は匠にあるので花と箕輪の態度も冷たい。
そのせいだろうか、匠は半べそになりながら進めていく。
「今日も帰るの深夜か……たまには早く家に帰りたいよ鷹さん」
「ダンボールで家作って住みな。いつだって帰れんだろ」
以前匠の家に行った際にあった、大量のダンボールを思い出す。
どうしてあそこまで溜め込めるのかが理解できなかった。
「ダンボールの家を建てるか……いいなそれ。いつでも家に帰れる気分だ」
「職場に小汚ぇ巣作らんでくださいよ」
「巣じゃない!!ちゃんとした家だ!!鷹さん、家に帰らないとダンボール無いから帰っていい?」
「そのまま帰ってこないつもりだろ、却下」
「ちゃんと帰って来るよ!!ダンボールの家を建てなきゃいけないもん」
「その前にこれを終わらすことが先決だろ!!」
「口ばっかり動かさないで書類作りましょうよ」
2人に叱られたせいか、慌ててパソコンと格闘し始めた。
「うう……家に帰りたいよぉ……」
1時時間かけて、ようやく1ページ目の3分の1が終わった。
しかし書類はまだ残っており、このペースだとどう考えても間に合わない。
「身から出た錆だろ。グダグダ言うと注射連れてくよ」
「…………」
「黙るんだ」
注射が怖いのか、黙りこんだ匠に2人は呆れる。
頑張っているのは分かるがすぐに意識が別の方向に行ってしまうので、その度に2人が叱りつけて意識を戻してやる行為を何度も繰り返す。
そのお陰でようやく1ページ終わったが、まだまだ残っている書類を眺めて匠は泣きそうな表情を浮かべた。
「こんなの終わるわけがないよ。もうやる気が……」
「終わったら卵あげるから頑張りな」
しかたがなしに、エサで釣る作戦に出た。
少しはやる気を出すだろう、そう思って言った言葉に、匠は過敏反応を起こす。
泣きそうな顔が、いつもの仕事をする際の顔に代わると
「5分で終わらす」
と言い、先程とは格段の速さで打ち込んでいく。
「最初からそうなりゃぁいいのに」
箕輪は呆れたように呟いてスニッカーズを食べた。
「終わったよ鷹さぁ~ん!」
バンザーイ!!と椅子を回転させて匠が喜ぶ。
そのまま壁にぶつかったが花は誤字脱字が無いか確認する。
問題が無いかと思ったが
「誤字!なんだいこの『実ッ走課』って!」
「それ間違えますかい??」
「それを直せば終わり?」
「……まぁ一応はね」
何で自分達の部署を間違えるんだ程度で、あとは問題ない。
このまま印刷をして天真に渡せば珍しく日付を越える前に帰れる。
「やれやれ……やっと俺達も帰れる」
何だかんだで匠に付き合っていたのは、匠の事を思っているからなのだろう。
それが主に匠が失敗すればその尻拭いは自分達がやる事になるから監視している意味が強いとしても。
「家に帰れるーこんな早い時間にー!!箕輪よ、久々に一卵していかないか」
倒れた椅子を起こして匠が問いかける。
「初めて聞きましたわその単語。何する気ですかひとたまごって」
「何だい飲みにでも行く気かい?何でアタシを誘わないのさ」
滅多に飲みに行けないので、2人は少しだけ乗り気だ。
しかし
「家でホビロンを食べさせてや 「アー ソウダ イソガシカッタンダ カエラナイト」
「明日も仕事だから遠慮するよ」
ホビロンと聞けばそのテンションは一気に下がった。
一緒に食べられると思ったのに断られたせいか、匠は肩を落とし目に見えて落ち込んでいる。
「いいもん一人じゃないもん……」
机の上に置いてあったティッシュとガムテだらけのダンボールロボを抱えて帰り支度をすませると、そのまま出て行ってしまった。
「何だいありゃ(ほぼゴミだね)」
「前に聞いたらお友達なんですって(ほぼゴミだな)」
「あの子友達が……ゴm、ロボなんて」
何故か急に匠がかわいそうな子に思えてきた。
まぁ今に始まった事ではないが。
2人はため息を吐き、そして匠の後を追う。
「……課長、俺は卵食いませんけどスニッカーズ食べますから、一緒にどうです?そのゴ……ロボットは置いといて行きませんか?」
「あたしの家に来たら美味いもん食べさせてやるから、そのゴm……ロボットは汚れちまうし置いて行きな」
「!! 分かった、すぐに机に置いてくる!!」
嬉しそうな顔になり走り出した姿を見て苦笑を浮かべる。
何だかんだ言って、やはり2人は匠が好きなようだ。
ちなみにロボットは、嬉しさ余りに慌てて走った匠が転び、その下敷きとなったので潰れた。
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