柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「……なこの商品、今ならなんと……」
黒に塗りつぶされた空には白い月と星が爛々と輝いている。
しかしその夜空は閉め切ったカーテンによって見ることなく、匠はぼんやりとソファに座りながらテレビを眺めていた。
照明をつけていないその部屋はテレビの光がぼんやりと匠を映し出している。
「いいな……これ」
テレビで紹介された商品を眺め、匠はポツリと呟く。
電話番号が表示されると、ローテーブルに置いた携帯を掴み、慣れた手つきで番号を押し耳へと運ぶ。
「……はい、先程テレビを見て……」
やり取りを終えるとまたローテーブルに携帯を戻し、テレビを消してソファへと横になる。
数秒後、静まり返った部屋の中で、規則正しい寝息だけが聞こえた。
そして、数日後。
匠は深刻そうな顔をして席に座っていた。
花は少し心配して声をかける。
「どうしたんだい課長?」
「鷹さん……実は……」
重々しく口を開けると、手に持っていたものを花に見えるよう差し出した。
「タマゴ通販して今朝届いたんだけど箱が大破してる……中身は無事だけど……」
こんな風になるなんて、と差し出された箱を見れば確かにどこかにぶつけたのか、一部破損している。
しかし、それよりも花は匠に言いたい事があった。
「何勝手に職場を受け取り場にしてんだい!!」
伝票を見てみれば、警視庁宛で送られてきている。
さすがに密葬課の存在は秘密裏にされているので適当な部署になっているが。
「だって帰るの遅いから受け取れないもん。ここだったらほぼ毎日いるから問題ない」
とドヤ顔で言うがそう言う問題じゃない。
「毎日いるからって……「おはよ~さん。鷹さんは今日も怒鳴っていて元気だねぇ」
花が叱ろうと口を開きかけた時、気だるげに箕輪が入って来た。
1時間の遅刻だが悪びれた様子はない。
「箕輪!!あんた遅刻のくせに何言っているんだい!!」
「俺はちょっと捕まって色々伝言頼まれていたんだよ。課長〜。事務の子からちょっと苦情きてんだけど〜」
「え?なんて?」
「私用の物をここで受け取るようにするな、って。まぁそりゃあ当たり前の事だろうけどな」
「……課長」
「な、何鷹さん?」
「正座」
「……はい」
言われた通り、大人しく正座をする。
背筋を真っ直ぐ伸ばしているのは花の教育の賜物だろうか。
「あんた、今まで何回通販したんだい?」
「えっと……6回」
「本当は?」
「……12回」
「倍も通販しているんですか課長」
「そんなに通販を利用しているんじゃないよ!!」
「ご、ごめんなさいっ」
怒られたせいか、ションボリしながら匠は謝る。
「今度からは自宅に届くようにしておく……ちゃんと受け取れるかなぁ……」
「一番は自分で買う事ですよ」
「箕輪の言うとおりだよ。……でも、あんたもそこに正座しな」
そして、その日の帰り道の事だった。
トボトボと怒られた事を引きずりながら歩いている匠の後ろから肩を叩く人物がいた。
反射的に裏拳を入れようとするが、その人物によって妨害される。
振り返れば
「よっ、匠」
「……切間か。勝手に名前を呼ぶな」
賭郎元お屋形様、現零號立会人の切間撻器が笑顔で立っていた。
「何の用だ?」
「実はな、礼を言いたくて」
「礼?」
「これの事だ」
そう言って取り出したのは、見覚えのある袋。
先日通販で頼んだ商品を入れいていた袋だった。
「これ深夜にやってたやつだろ?俺のためにあんな時間まで起きてたのか!!」
「え?違うけど」
「え?」
「誕生日だったのは覚えていたけど、プレゼントを買える時間が無かったから通販で頼んだ商品にしたんだ。そもそもテレビは深夜にしか観えないんだ……帰るの遅いから」
そのせいで買い物も満足にできない、と落ち込む匠に撻器はかける言葉を迷わせる。
「その……何だ、うん。大変なんだな」
「あぁ……。それにも書いておいたけど、誕生日おめでとう」
「ありがとう。……密葬課にはテレビはないのか?」
「無い。前に箕輪がボタン変えようとして壊しちゃったんだよ」
「そ、そうだったのか……」
「たまには通販以外の番組を見たい……」
録画しておけばいいんじゃないのか?と言う前に匠は肩を落としたまま歩いて行ってしまった。
後日、真鍋匠様宛にと、密葬課にテレビが届いた。
「あんだけ言ったのに、こんなもん注文したのか!?」
「え?いや、本当に知らないんだ!!ちゃんと鷹さんとの約束守っているもん!!」
鷹の怒りに匠は必死に否定をする。
「ぐはっ、匠の奴喜んでくれたかな?」
まさか匠が怒られているとは知らず、テレビを送った張本人は喜んでいる匠を思い浮かべ上機嫌になっていた。
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