柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「門っち、俺は神様みたいな人に出会えたよ」
完璧ゆえに目指すものが無かった目蒲の目が輝いている。
それは親友である自分には見せた事がなかった、表情。
「佐田国様という名前でね、彼は凄いんだ!!あの命を……」
興奮して語る言葉には熱がこもっている。
崇拝しているともいえるその様子に
「そうか。良かったな、メカ。本気になれる相手がいて」
門倉は笑った。
それは本心でもあり、彼の支えを崩したくない、そんな思いもあった。
「今日も佐田国様が勝ったよ」
「ほうか。これで3連勝……じゃったか?」
「うん。やはり佐田国様は素晴らしい。死を恐れないあの姿勢、そしてあの剛直さ……もっと早く会えれば俺の人生も素晴らしいものに変わっていたかもしれないのに」
「そうかもしれんが、立会人になったからこそ会えたのかもしれんぞ?それに、俺にも会えたってのは素晴らしいものにカウントされないんか?」
門倉が聞くと、目蒲は困ったように笑う。
「うーん、門っちねぇ……門っちのせいで仕事増えたってのもあるからなぁ」
「おい!!」
「ごめんごめん、冗談だよ。門っちに会えたのもいい事だと思っているよ。ただねぇ……」
門倉を見つめる目が少しだけ変わる。
どんな意味があるのか、読み取ることができない。
「……やっぱりなんでもない」
見つめようとする前に目を伏せた。
長い睫毛が影を落とし、どこか儚いその姿を失いたくない、と抱きしめたくなるが……門倉はその衝動を抑えた。
抱きしめる資格は自分ではなく、目蒲の光になった彼だけなのだから、と自分に言い聞かせるように
「何じゃ、気になるじゃろ」
「何でもないったら何でもない!!ほら、まだ仕事残っているんでしょ?行かないと」
早く戻りなよ、と門倉の背中を押して笑っているが、佐田国の事を語った時のように、輝いている笑顔とは違う。
仕方なしに先に戻る事にし、自分の席へと戻る。
「……俺は、メカの光になれんかったな」
どうしてこんなに近くにいたのに、他の奴に取られてしまったのだろう、と門倉は小さく呟いた。
佐田国と目蒲が粛清されたと聞いて門倉は特に動揺はしなかった。
きっと佐田国を守る為に目蒲は號奪戦を挑んだのだろう、そこに後悔はきっとないのだろう、とも思った。
「目蒲立会人の私物は全て処理するように」
「私がやっておきます」
「そうですか。では頼みましたよ、門倉立会人」
「はい」
片づける物と言っても、目蒲は私物を持ってくることはほぼ無かった、仕事関連のものは引き継ぎを行わなければいけないので黒服に渡しておく。
「……ん?」
引き出しの奥で、カサリと紙が触れる音が聞こえた。
不思議に思い手を奥へ入れると、少しだけ厚みがある紙に触れた。
引き出せばそこには握り潰されたのか、折り目がついている封筒が出てきた。
淡い黄色は彼の髪色を思い出し、心臓がズキリと痛む。
宛名を見れば、『門倉雄大様』と丁寧な字で書かれていた。
封筒の裏側には『目蒲鬼郎』と名前が書かれてある。
「メカが、俺宛に……?」
中身が気になったがまだ処分しなければいけないものがある。
皺を伸ばし、そっと内ポケットの中にしまった。
処分すべきものは全て処分した。
後は彼の後釜になる立会人が入って、そして賭郎は動き回る。
いつ誰が死んだってそれは変わらない、それは自分であっても。
それよりも気になっていたのは、目蒲からの手紙。
どうして彼は自分に手紙を書いたのか、そしてどうしてそれを渡さなかったのかが気になり、糊付けされた封を丁寧に剥して中身を取る。
折りたたまれた紙は1枚だけで、それを広げて文字を追う。
『門っちへ』
『この手紙に、俺の純粋な気持ちを書こうと思います』
『読んだ後はどうしても構いません。捨ててもいいし、返事もいりません』
『ただ、俺の気持ちを言わせてください』
『男同士なんて、って思ったこともありました』
『門っちがいなければ良かったのに、苦しい思いをしなかったのに』
『そう思ったこともありました。今思えば最低だよね、俺』
『でも、友達としても、人としても』
『俺は門っちに……雄大に会えて』
『本当に良かった、大好き』
綺麗な字で書かれた、短い手紙だった。
他には何も入っていない、短い想いが込められた恋文。
「遅いんじゃよバカ野郎……」
この告白はいつのものだったのか
佐田国に会う前だったのか、それとも今も想っていてくれたのか
二度と返事できない目蒲の笑顔を思い出し、門倉はくしゃりと手紙を握り潰した。
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