柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「私はいつ殺されるのだろう?」
「……何だい、死にたいのかい?」
「今すぐ死にたいわけじゃない。でも誰かがいつか殺してくれる気がする」
大真面目な顔で、大真面目な声で匠が答える。
冗談じゃない様子に花は問いかける。
「どうしてそう思ったんだい?」
「因果応報だろ?」
匠はそう言って自分の手を見つめた。
少しだけ節くれだって、少しだけ傷跡だらけの手
「私は何人もの人を殺した。ターゲットを殺した。ターゲット以外も間違えて殺した。目撃者も殺した、組織自体を潰すためにそこいた全員を殺した。殺して殺して殺して……そして私は生きている」
「そういうところだよ、ここは」
「知っている。納得しているし自分が行っている行動に疑問を持っているわけでも軽蔑しているわけでもない。だがしかし因果応報なら、いつか私達の密葬課も誰かの手によって潰されるか、私自身が殺されてもおかしくないと思わないか?」
「あんたは自分がやっている事を悪い事だと思っている、そう言っているって事でいいんだね?」
「悪い事だと思っているか……半々だな」
手に向けていた視線を今度はコーヒーカップへと移す。
中身は空っぽだ。
「逮捕しても反省しないバカもいれば、やむを得なく犯罪に手を出さなければいけなかった奴もいるだろう。殺すしか選択肢がない奴もいれば更生のチャンスがいた奴もいただろう。その可能性を全部私は奪っていた」
秩序の為に、ためらいもなく、と呟く。
花はただ黙って匠の言葉を待った。
「私は分かっている。いつも自分が命を狙われる立場にいる事を。いつ殺されても死んでもおかしくないと言う事を。だから不思議なんだ、因果応報が事実ならばなぜ今も私は生きている?私も秩序を守るとはいえ犯罪者だ。しかし誰も罰しようとしないじゃないか」
「……生きているのが辛いなら死ねばいいよ」
その代わりこっちの仕事は増えるけどね、と帽子を深くかぶり直す。
匠は花に視線を向けると、首を傾げた。
「いや、辛くないが?」
「だったらそんなくだらない事を考えていないで仕事しな」
「そうだな、そうしよう」
あっさりと考えるのを止めたのか、次のターゲットの書類に目を通すと立ち上がる。
内容を完璧に覚えるとシュレッダーにそれをかけた。
後で誰かが焼却処分をするだろう、と匠は横目で見て外へ向かう。
いつか自分も因果応報で大切な人を失う日が来るだろう
それが密葬課、裏側の番人
だからこそ、匠は思う
「生きているのは辛くないが、自分の部下が死ぬのは辛いだろうな」
覚悟している立場だ、誰を失おうと涙は流さない、悔いる事はない。
しかし失うのはいつだって悲しい事だな、と匠は思った。
因果応報なのか、それとも必然なのか
部下を失い、密葬課が潰れるのは、もう少し先の話
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