柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「眩しいの」
手で影を作り、目を細めながら門倉は天を仰いだ。
隣を歩いていた南方も同じように手で影を作っている。
「それに暑いよな。梅雨明けらしい天気だけど」
「よぉやっと梅雨があけたのはいいが、これからは暑くてたまらん」
「そういえば梅雨時はかなり苛立っていたよな」
最近まで喧嘩した際の事を思い出す。
門倉は不機嫌そのものを露わにして、舎弟達が少しだけ怯えた表情を見せていたような気がする。
「雨に濡れると髪型が崩れやすいからな」
「あぁそれで……後は雨が降られると制服の裾が俺達の場合汚れやすいよな。もう夏服には変わったから問題ないが」
2人のトレードマークと言える長ランは今はクローゼットの中に眠っている。
さすがにこれから暑くなる事を考えれば当然のことだろうが。
「馬鹿言うなや。雨が降らなくてもワシ等の場合は汚れやすいだろ」
「それは言えているな。モテる男は困るものだ」
主に喧嘩だけどな、とわざとらしく肩をすくめて言ってみれば門倉は嫌なもて方じゃの、と笑った。
しばらく談笑しているとコンビニが目に留まる。
【かき氷はじめました】とのぼりが立っているそのコンビニの目の前で2人は立ち止まる。
「何か冷たいモン買うか」
「おどれの奢りじゃからな」
「なんでそうなる」
「この前の喧嘩は俺が勝った」
「……あんまり高くないものだからな」
さて何を買おうか考えながら足を踏み入れようとした矢先、複数の男の怒声が響く。
横を見てみれば顔には大きなガーゼが当てられている男を先頭に、いかにも喧嘩慣れしている男達が2人を……と言うより、門倉を睨みつけている。
「門倉、お前の友達か?」
「アホ言うなや。多分この前壊滅させた族の奴等じゃの」
「ご指名入っているぞ?モテる男は辛いな」
「本当じゃのぉ」
面倒そうにため息を吐いたが、その目は狩る者の、今からいたぶり楽しもうとしている獣と同じ目だ。
「のぉ、門倉」
「何じゃ南方」
「これの喧嘩手伝って借り貸し無し、ってのはどうだ?暑い中暴れたくないだろ?」
「自分が暴れたいだけじゃろ。でもまぁ、確かに暑い中動くのは面倒だな。手伝え」
「もちろん喜んで」
そう言って笑った南方も、門倉と同じ目をしていた。
擦り傷だらけの門倉は、最後の1人を殴り飛ばして息を吐き出す。
弱い集団だが数が多ければ面倒だ、と煙草を取り出そうとして、中身が入っていない事に舌打ちをする。
「お疲れさん」
「お前途中からどこ行ってたんじゃ」
「暇になったからコンビニに行って買い物しとった」
「手伝えやボケ」
「必要最低限は働いたっての。ほれ」
南方から差し出されたものを手に取る。
安くて美味いと評判の、当たり付きのアイスキャンディーと、煙草。
南方も同じものを買ったようで、袋から取り出し噛り付いていた。
「よく煙草も買ってきたな」
「貸しを作っておこうと思ったからな」
そう言って笑うが、そんな気は全く無いのだろう。
人を使うことを躊躇わない男だが、自分に対しては友人のように接しているような気はする。
違う派閥の筆頭同士だ、敵ではあるがこうして隣にいるのは不快ではない。
「しっかしなぁ……」
アイスキャンディーを食べ終えた南方がそのまま空き袋を捨てる。
「さっきの喧嘩があんまりにもつまらなすぎて不満だ。門倉、少し殴り合わないか?」
まるで遊びに誘うように南方が言う。
門倉はニヤリと笑うと、同じようにゴミを投げ捨て、首をごきりと鳴らした。
「いいぞ」
やはり仲良く歩くよりは、殴り合った方が俺達らしい
そんな事を思いながら2人の拳が相手へと向けられた。
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唐突な思いつきといつもある愛情 << | HOME | >> 鬼の居る森 |
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