柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「蝉が鳴いている」
匠の言葉に撻器はそうだな、と片口を満たしながら答えた。
今日は月でも見ながら飲もう、と珍しく誘ってきた匠の期待に答えるべく、縁側にたくさんの酒を用意して撻器は迎え入れた。
「うるさいのは嫌いか?」
「いや、別に。ただ思ったまま言っただけだ」
「そうか」
匠が唐突に何かを言うのはもう慣れていることだ。
撻器は片口を匠に渡す。
ありがとう、と小さく答えると口をつけて飲み込んだ。
苦味が効いている、その濃厚な味わいを楽しむ。
「醇酒を飲むとは初めて知った」
「もらった物だ。何でも美味いと普段はあまり飲まない」
「普段は何を?」
「気分によるな」
そう言って撻器がもっているのはカットグラス。
その中には丸い氷と琥珀色の酒に満たされていた。
「……撻器はウィスキーか」
「あぁ。匠も飲むか?」
「 いや、いい。しかしなぜ同じ物を飲まない?封を開けたのに勿体無い」
「後で飲むさ。それに、たくさん酒は用意しているし俺達はそう簡単に酔わないだろ、適当に飲みたいと思ったものを飲む方が楽しいだろう?」
「それもそうだが、やはりダメだ」
匠は不満そうに撻器からカットグラスを奪い取る。
少しだけ中身がこぼれ、匠の手を濡らした。
「どこに文句があるんだ」
「同じ時に同じ物を飲んで楽しみを共有したいだけだ」
「……ぐはっ。素直になるなんて珍しい」
酒のおかげかな?と濡れた手に唇を寄せて撻器は笑う。
不満そうに匠は撻器へ視線を送った。
「たまにしか会えない恋人にワガママを言うのは悪いか?」
「いいや、そんな事はないさ」
ならば俺も同じ物を飲もうか、と撻器は片口を匠に差し出した。
「月を見る予定だったはずだが?」
押し倒されている匠は撻器を見上げながら問いかける。
「月もいいが、こうして酔いに身を任せるのも悪くないだろ?」
少しだけ酔いが回っているのか、普段は冷たい手がじんわりと熱をもっている。
目は理性を保っているが、その奥にはどろりとした情欲が伺える。
「……まぁ、いいだろう」
「ん?珍しいな。普段はお預けなのに」
「ん?珍しいな。普段はお預けなのに」
「手を舐められた時、少しだけ欲情した」
「ぐはっ、普段からその位素直に欲情すればいいのに」
「ぐはっ、普段からその位素直に欲情すればいいのに」
唇が触れ合う。
ふわりと酒の香りが鼻をくすぐる。
「酔いとは恐ろしいものだな」
その背に手を回し、匠は自ら唇を寄せた。
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