柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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小さな体が崩れ落ちた
小柄だった人ではあったが、歩く機能を失っていた足は特にやせ細り、少し強く握りしめれば折れてしまいそうな枯れ木に似ている、と弥鱈はその人を見て思った。
その人から流れ出る赤い液体を踏まないようにと少し後ろへと下がった時に、息を切らせた男がやって来た。
「じい……ちゃん……?」
ふと、目の前に愛する人が唇を震わせてその人を見つめていた。
その顔は青ざめ、目を見開いている。
「あぁ、遅かったですね、巳虎さん」
「何で……何で……?」
自分の声は届いていないのか、と弥鱈は小さく肩をすくめた。
しかし仕方がない、巳虎は目の前にある死体―――能輪美年―――の事を狂信している男だ。
その美年が死んでいるのだから正気でいるわけがないか、と弥鱈は巳虎を観察して思った。
「弥鱈、これはお前がやったのか?」
巳虎は弥鱈を睨みつける。
憎しみに満たされたその目は、見ていて気持ちが良いものだ。
「えぇ、そうです」
「何故殺した!?何で、何でじいちゃんを!!」
今にも自分を殺さんばかりの殺気に、弥鱈は満足そうに笑う。
「巳虎さんの心が欲しかったからです」
「俺の心……そんなくだらない理由で……?」
「はい。巳虎さんにとってはくだらなくても、私にとっては十分すぎる理由ですよ」
どんなに深く愛しても、どんなに傍にいたとしても、彼の中で一番なのは祖父である能輪美年。
恋人になった今でも、巳虎の心は美年の方へと向いている。
「ならば殺せば私の方を向いてくれるんじゃないかと思ったんですよ」
美年を殺せば巳虎は必ずその人物を憎み殺すだろう。
そうすればやっと巳虎の心は私だけを見つめている、と弥鱈は楽しそうに嬉しそうに話す。
「テメェ……!!」
「あぁ、その顔ですよ巳虎さん。すっごくいいですよ」
巳虎の手が、弥鱈の首へとかけられる。
弥鱈は抵抗せず満足に笑う。
「そんな顔を見せてくれるのは、私だけでしょうね」
「……だら、弥鱈!!」
揺さぶられる感覚に、弥鱈は目を覚ました。
「やっと起きたか。ほら、飯できてるぞ」
「……私は何を?」
「はぁ?覚えてねぇのか?俺と飲むって約束して、そのまま寝たから泊めてやったんだよ。で、今飯できたから起こしてやった」
「そうですか。……ちょっと残念な気がします」
「あ?」
「あまりよく覚えていませんが、とてもいい夢を見た気がするんですよ」
「夢ぇ?お前見そうにないけどな」
「普段は見ませんよ。確か……巳虎さんが出てきたような気がします。だから幸せな夢だったんでしょうね」
「何だそりゃ」
呆れたように巳虎が笑う。
その顔を弥鱈は見つめていた。
「……この顔を見られなくなるのは嫌ですね」
「はぁ?」
「何でもありません。ご飯食べます」
「じゃぁさっさと起きろっての」
どちらも好きで、どちらも魅力的で、どちらも独り占めしたくて
さぁ、どちらを選ぼうか?
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