柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「前にも言いましたが、一番美味しいのって内臓なんですよ。特に巳虎さんの心臓は格別な味がします」
弥鱈の発言に巳虎は顔をしかめた。
その上腕には巻き途中の包帯がされており、弥鱈の口元には赤黒くなった血液が付着している。
私が巻きますよ、と弥鱈が言ったが血の臭いでまた食いつかれたらたまらない、と巳虎は断った。
「内臓が美味いって言うけど、血抜きしなくても美味いのか?」
「まぁ血抜きした方が美味しいとは思いますが、どちらかと言いますと私は鮮度重視なので」
「そうか」
「だから巳虎さん……「断る」
近づいてきた弥鱈の顔を手のひらで押し返す。
このままだと下手すれば手を食われるかもな、と思ったが食べる気配はない。
基本的に彼は巳虎が許さなければ勝手な行為はしないのだ。
「どうしても無理ですか」
「死ななくてもこっちには痛覚があるんだよ」
それは常人よりも遥かに鈍い感覚だが、巳虎が自分が人と変わらない繋がりの一つとして大切にしている物である。
それを知っている弥鱈は少しだけ呻くと、もう一度巳虎に頼む。
「なら麻酔をかけてならよろしいですか?少し味が変わってしまいますが巳虎さんの内臓を食べられると思えば……」
「……お前後でここから追い出すぞ?」
「それは困ります。巳虎さんと一緒にいない生活なんて今ではもう考えられませんので」
真顔で言う弥鱈に、巳虎はため息を吐いた。
「何でそんなにケガしとるんじゃ?」
「あ?」
門倉に呼び止められた巳虎は、怪訝そうに振り返る。
巳虎の上腕に巻かれている包帯に門倉の視線が注がれている。
「毎日……って程ではないが、頻繁に包帯を巻いているじゃろ。そんなにひどい傷を何で負っているのかと思って」
「……まぁ、あれだ。色々あるんだ」
「お前が頻繁に包帯を巻くようになったのって、確か弥鱈の奴と一緒に住むようになってからじゃないか?」
「あー……」
まさか弥鱈がカニバリズムで自分が不死身だから食われている、なんて言えるわけもなく、巳虎は口を濁した。
「そもそも、お前弥鱈の事気に入っていなかったのにどういう風の吹き回しで一緒に住むようになったんだ?」
「それも色々あるんだ」
「……お前にも事情があるみたいだし、あまり口出しなんてしたかないがの、仕事に支障きたすようなケガをされたら迷惑じゃけぇ、一回弥鱈と距離をとったらどうじゃ?」
「……いや、それは無理だ」
きっぱりと断った巳虎に門倉は少し目を丸くさせた。
巳虎の脳裏に、とある映像が思い浮かぶ。
一度だけ、距離をとった時があった。
暗い部屋、うずくまっている弥鱈
「俺がいないと、あいつどうしようもない位部屋汚いからよ」
苦笑を浮かべる巳虎の顔をじっと見る。
何かを探っているような目だが、まさか食人鬼と不死身が同居しているなんて分かるはずがないだろう、と巳虎は苦笑を浮かべたままだ。
「……そう言うなら俺もあまり口出さないが、酷い時には考えておけよ?」
「大丈夫大丈夫。むしろ俺がいないと色々酷くなるし、それに」
周囲に散らばる赤の中心でうずくまっている弥鱈を見たあの日から
「何だかんだであいつ放っておけないからよ」
自分達は似た者同士なんだろうな、と巳虎は思った。
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