柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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体が宙に浮いたと思うと、すぐに叩きつけられて転がり落ちて、世界がグルグルめまぐるしく変わっていく。
やっと止まってここで終わりか、と思って目を開けば、空が広がっていた。
「匠」
名前を呼ばれ目を開くと、人の輪郭がぼんやりと浮かび上がる。何度も瞬きをしてピントを合わせればもう見慣れた男の姿だった。
「何だ?」
「嫌な夢でも見ていたのか?」
眉間にしわが寄っている、と人差し指を押し当て、しわを伸ばすように動かす。
その行為を止めようとせず、匠は上を見た。見慣れた天井があるだけで、そこに空はない。窓の外を見ればまだ日が昇っていない。
「嫌な夢では、無かった」
「そうか。起こして悪かったな」
「問題ない」
眠らないのも起こされるのも何もかも慣れてしまっている。自らがその身を預けるそこは、一瞬でも気を許せば死ぬ世界だ。
だからなのか
「空を見上げる夢を見た」
「空を?」
「どこか分からない所まで転がり落ちて、ここで私は終わってしまうんだろうな、と思ったら、空があった」
「変わった夢だな」
「そうだな。でも、嬉しかった」
空も何も見えない世界じゃなかった。二度と戻れないような世界まで転がり落ちてしまったわけじゃなかった。
「きっと賭郎から抜け出せるって暗示だったのかもな」
「それは許さないぞ!!」
「ムキになるな」
「抜け出したら絶対に追いかけるからな!!……また寝るのか?」
「誰かさんが起こしたせいで寝不足になるのは避けたい」
「徹夜平気なくせに」
「好きで起きているわけじゃない。お前もいい加減に寝ろ」
「ぐはっ、寒くて眠くないんだよなこれが」
仕方が無しに目を開けて撻器へと視線を移す。撻器は笑いかけるだけだ。
「……仕方がない、隣で寝ていいぞ」
「失礼する」
すぐに潜り込むと匠に腕を絡ませる。ひんやりと冷えた手が服の中へ滑り込んできて、匠の眉間に再度しわが寄った。
「冷たい」
「すぐに温めてくれ」
「ふざけるな」
「んふふ、こうして抱きしめておけば夢の中で匠が逃げる事はないだろ?」
「……バカか、お前」
夢は夢だ、とその額を叩いて背中を向ける。
「匠~。寂しいんだが」
「うるさい。さっさと寝ろ」
「もっと甘い時間を過ごす気はないのか。……おやすみ」
ぎゅう、と抱きしめる力がほんの少しだけ強まる。
(……帰る場所がここなのだから、逃げるなんて選択肢はないだろ)
窓を見れば日が昇り世界が色づき始める。
その空を閉ざすように、瞼を閉じた。
やっと止まってここで終わりか、と思って目を開けば、空が広がっていた。
「匠」
名前を呼ばれ目を開くと、人の輪郭がぼんやりと浮かび上がる。何度も瞬きをしてピントを合わせればもう見慣れた男の姿だった。
「何だ?」
「嫌な夢でも見ていたのか?」
眉間にしわが寄っている、と人差し指を押し当て、しわを伸ばすように動かす。
その行為を止めようとせず、匠は上を見た。見慣れた天井があるだけで、そこに空はない。窓の外を見ればまだ日が昇っていない。
「嫌な夢では、無かった」
「そうか。起こして悪かったな」
「問題ない」
眠らないのも起こされるのも何もかも慣れてしまっている。自らがその身を預けるそこは、一瞬でも気を許せば死ぬ世界だ。
だからなのか
「空を見上げる夢を見た」
「空を?」
「どこか分からない所まで転がり落ちて、ここで私は終わってしまうんだろうな、と思ったら、空があった」
「変わった夢だな」
「そうだな。でも、嬉しかった」
空も何も見えない世界じゃなかった。二度と戻れないような世界まで転がり落ちてしまったわけじゃなかった。
「きっと賭郎から抜け出せるって暗示だったのかもな」
「それは許さないぞ!!」
「ムキになるな」
「抜け出したら絶対に追いかけるからな!!……また寝るのか?」
「誰かさんが起こしたせいで寝不足になるのは避けたい」
「徹夜平気なくせに」
「好きで起きているわけじゃない。お前もいい加減に寝ろ」
「ぐはっ、寒くて眠くないんだよなこれが」
仕方が無しに目を開けて撻器へと視線を移す。撻器は笑いかけるだけだ。
「……仕方がない、隣で寝ていいぞ」
「失礼する」
すぐに潜り込むと匠に腕を絡ませる。ひんやりと冷えた手が服の中へ滑り込んできて、匠の眉間に再度しわが寄った。
「冷たい」
「すぐに温めてくれ」
「ふざけるな」
「んふふ、こうして抱きしめておけば夢の中で匠が逃げる事はないだろ?」
「……バカか、お前」
夢は夢だ、とその額を叩いて背中を向ける。
「匠~。寂しいんだが」
「うるさい。さっさと寝ろ」
「もっと甘い時間を過ごす気はないのか。……おやすみ」
ぎゅう、と抱きしめる力がほんの少しだけ強まる。
(……帰る場所がここなのだから、逃げるなんて選択肢はないだろ)
窓を見れば日が昇り世界が色づき始める。
その空を閉ざすように、瞼を閉じた。
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