柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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味気ない料理を食べる。
かみ砕いた唾液と混ざり合った無味な物の感覚が気持ち悪い。
「悠助。残すんじゃない」
父親の声が響く。
その声に従うように、吐き出したい衝動を必死に堪えて食べる。
肉を口に含むと、それだけがやっと味を感じられるものだった。
今までの感覚を忘れるように、味わうようにそれを噛み続けると
「……すけ!!悠助!!いてぇんだよ!!」
怒声と共に殴られ、口の中にある極上な血と肉の味にようやく自分は寝ていたのかと気づいた。
食べるのなら女よりも男の方が美味い、というのは弥鱈の持論だ。
女の場合だと香水や化粧の匂いで食欲がわきにくい、とも付け加える。
「……俺は人食わないから知らねぇけど、そんなに味が違うものなのか?」
寝ぼけて噛まれてしまった腕に包帯を巻きつけている巳虎の質問に弥鱈は頷く。
「えぇ。その人の食生活も関わるとは思いますが、脂肪の多い女性よりは男性の方が食べやすいです」
「お前脂身あまり食べないもんなぁ。てことは賭郎の人員はほぼ美味そうな飯に見えるのか?」
「食べたいと思う人は何人か。でも巳虎さんにはかないませんよ」
「それは俺は食べても減らないからだろ」
「いいえ。好きな人には到底かなわないのが現実でしょう」
「真顔でそんなこと言うなよ……」
呆れているような顔をした巳虎に、弥鱈はどうすればきちんと巳虎にこの想いを伝えられるのか頭を悩ませていた。
弥鱈としては好きな人ゆえにその一部を自身の体内へと入れ、1つになりたいと歪んではいるが巳虎に対しての恋愛感情があり、食料扱いしているわけではない。
しかしそれを伝えたとしても
「別にいいって。お前どうせ減らない食料みたいな感じに思っているんだろ?」
と、巳虎に軽く流されてしまうのだ。
初めて巳虎と闘ったあのテレビ局で、擬態を使ってしまったのがすべての原因か。
それとも巳虎が入院していた時のやり取りが原因か。
どちらにしろ、本気にされないのは腹立つものを感じる。
「巳虎さん」
「ん?」
「確かに私はあなたを食べてしまいます。それによってあなたに食料扱いしているという誤解を招いてしまっているのも否めません」
「いや、だって本当のこ「話は最後まで聞いてください」
巳虎の両肩を掴み、目を合わせる。
「私は、純粋にあなたと共にいたい。あなたと1つになりたい」
はっきりと、真正面から自分の気持ちを伝える。
「いや、だから食事的な意味で、だろ?」
「……どうすればあなたに私の気持ちが伝わるんですか……」
「俺を食っている時点で信用できねぇだろ」
腕が痛むのか、包帯越しからさすっている巳虎は、視線を少し彷徨わせて
「……まぁ、お前が俺の事を必要としてくれているってのは、嬉しいけど」
と、付け加えた。
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