柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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ほんの気まぐれで、撻器に料理を振る舞ったら驚かれた。
こいつの目はよく丸くなるなぁ、と長は思う。
「料理できるんだな」
「自炊していたから人並みにはできる」
驚きながら食べている撻器に素っ気ない返事が返ってきた。
同じものを食べる長を見て、ホビロンを食べている姿しか見たことがない撻器は違和感を持つ。
「いやぁ、ホビロンばかり食べているからできないものだと思っていたんだが……」
「茹でるだけでできて手軽に食べられるからな」
「そしたら別の料理もあると思うぞ」
「別にどうでもいいだろう」
人に作るなんて初めてだな、と長は思いながら共に食事したのは数日前。
そして今
「何の用だ?」
「飯を食いに来た。また何か作ってくれないか?」
「自宅に帰れば作ってもらえるだろ」
「長の料理がいいんだ」
「……分かった、入れ」
「言っておくが、ホビロンはだめだからな!?」
「お前にホビロンをやるわけがないだろ」
何の連絡もなく家の前に来ている撻器に諦めがついたのは何度目の襲来時だったか、と中に入るよう促した。
遠慮することなく入っていき、ダイニングにある椅子に座る。
「今日は何を作ってくれるんだ?」
「ある物ででしか作れない。そもそも、急に来たのに出してもらえるだけありがたく思え」
冷蔵庫の中を見れば僅かながらホビロン以外の食材が入っている。
炒飯くらいなら作れるか、と食材を取り出し、早速調理に取り掛かった。
「長は何が得意料理なんだ?」
「ホビロン」
「……いや、それ以外で」
「レシピを見れば難易度が高くないものだったら作れる。わざわざレシピを見ながら作る気になれないがな」
「そうなのか。だったら今度俺が何かリクエストしていいか?」
「お前の為に料理を作ると思うのか?」
「今作ってくれているじゃないか」
「……」
手を止めた長に、撻器は大笑いする。
「ぐはぁっ!!もしかして自覚が無かったのか?」
「別にお前の為に作っているわけじゃない。自分の為だ」
「そんなにたくさん食べるのか?」
「……余ったらやる」
「素直じゃない奴め。でもそう言うところが好きだぞ」
「もういいから黙れ」
これ以上からかったら包丁を投げられるだろうな、と思い黙って完成を待つことにした。
手際よく何品か作っており、栄養バランスを意外と気にするんだな、と思いながら眺めている。
「見ていて楽しいのか?」
「まぁな。長は手際がよい」
「作った事もないのによく言うな。ほら」
差し出された料理をテーブルまで運び、エプロンを外した課長と向い合せに座る。
いただきます、と手を合わせて言うと、静かに食事を始めた。
出された料理を全て平らげると、食器を洗い始めた長の腰に手を回す。
初めは殴られていたが最近はそれがなくなり、いい傾向だと内心思う。
「邪魔だ」
「今度は長の得意料理が食べたいな」
「得意料理はないから諦めろ。それにわざわざ私の家に来ないで自宅で食え」
「長と一緒に食べるのがいいんだ。来週なんてどうだ?」
「約束なんてするわけないだろう。そもそも、お前は急に来るから……」
「俺が急に来るから?」
「……やはり何でもない」
「…………んふふ~。やっぱり俺は長の事大好きだぞぉ」
わざわざホビロン以外の食材が入っている理由が自分なのかと思えば嬉しくなり抱きしめる力を強める。
邪魔だと言って振り払わないのは、嫌がっていない証拠だ。
漏れ出している笑い声を聞いて
「図に乗るな」
と一言だけ言うと、来週はいつ食材を買って、どんな料理を振る舞ってやろうかと頭の中で献立を考え始めた。
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