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柚の樹と螢

柚の樹と螢

pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場 不定期に増えます よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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初めての南門
南方君視点なので門倉さんあまり出てきません。
門倉さん視点も書きたいなぁ、と思いつつ書ける日が来るのやら…


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鮮血が飛び散りながら、糸が切れたマリオネットのように門倉の体が崩れ落ちる。
駆け寄ってその体を受け止めようとするが、なぜかその足は動いてくれない。
どんどん血の中へと沈んでいく門倉の名を叫んでいるはずなのにその声が出てこない。
最後に、門倉が俺を見て

「もう間に合わんよ」

そう言って笑いながら沈んだ。




この夢を見る時は、決まって目覚めが最悪だ。

南方はそう思いながら気だるい体を起こした。
カーテンの隙間から差している日差しはまだ薄暗く、普段よりも早い起床か、とぼんやり思う。
また寝てしまってもよかったが同じ夢を見るだけだろう、とため息を吐くと、少しでも不快感を消すためにシャワールームへ向かった。


 自分と似た人間がいると知った時、最初に抱いた感情は高揚感だった。
その男も自分と同じように組織を持っていた、力を持っていた。
まるで自分を生き映したような人間が、同じ街にいるとは思っていなかった。

その人物に初めて会った時、支配したいと思った。
徹底的に痛めつけ屈服させ、自分のものにしたい。
結果は自分が負けになり、門倉は勝手に遠くへと行ってしまった。

こんな呆気ない結果が最初で最後の喧嘩なのかと、空を見上げながらそんな事を思った。


それからの再会だったのに、自分はまた負け、門倉は箕輪によって負わされた傷で意識不明の重体だ。

「南方恭次。拾陸號立会人に任命します」

そう言って渡されたハンカチは門倉と同じ號で、もしもあいつがいなくなったとしての代用品かと思うと、怒りが込み上げてきた。
自分が代用品代わりにされた事はどうでもよいが、門倉が死ぬ可能性もある、と言われているような気がした。




警視正と立会人の二重生活により多忙だが病院に行くことだけは毎日ほぼ欠かさず行っている。
見舞いの品を持って行ったところで意味が無いのでいつも手ぶらだ。

「通してくれ」

護衛を兼ねているのか、門倉の病室の前には常に2人の黒服が立っている。
ハンカチを見せて身分を証明するとドアを開けられ、その中に入った。

中にも黒服はいるが、南方の姿を確認すると入れ替わるように病室から出ていく。
気を遣わなくていいのに、と苦笑したことがあるが門倉と昔からの友人である黒服の指示らしい。

「よぉ、門倉」
「……」

頭には包帯を巻かれた門倉が、呼吸器をつけて静かに眠っている。
普段はその力強い目に圧倒と魅了されるのに、目を閉じているだけでこんなにも雰囲気は変わる物なのか、と南方はぼんやり思った。

「……のぉ。いい加減起きんかい」

手術は成功したが障害が残る危険性がある、と聞いた。
それから一度も意識を取り戻す事なく、静かに眠り続けている。

「自分のトサカ整え直すのは俺が最初で最後とゆうたのに、何崩されとるんじゃ」

長い髪を撫でてみる。
こんな事をすれば殴られるかその前に避けられるはずなのに、何の抵抗もない。

「俺が負けた相手がこのまま簡単に死んだら、俺の格好がつかんじゃろ。はよ起きんかい」

このままあの夢のようになってしまう気がして、らしくもなく手を強く握る。
少しだけ細くなった血色の悪い冷たい手は、このまま冷たいままかと不安が募る。

「このまんま起きんならわれより上の號とっちゃるぞ」

相当悔しい思いをするだろうな、と呟いてみれば、小さく笑う声が聞こえた。
驚きその顔を見てみると、うっすらと目を開けた門倉が笑っている。

「お前がわしより上になれるわけんじゃろ、南方」
「門倉……」
「夢でも現実でもお前に会うなんて、わしは相当ついとらん」

ナースコールを押すか、外にいる黒服を呼んで門倉の意識が戻った事を伝えるか、やらなければいけない事がある。
それよりも先に、南方は門倉を力いっぱい抱きしめた。
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撻器さんと長の組み合わせが大好物な腐女子です
妄想をいただけると勝手に書いていることもあります

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