柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「おや、課長」
「……鷹さんか」
線香の専門店に入った花は、すでに会計をしていた長を見て不思議そうな顔をした。
袋の中には大量の線香の箱が入っている。
「買い物か?」
「ここのお香が気をリラックスさせるのに気に入っていてね。課長は?」
「線香を買っただけだ」
「……墓参りかい?」
密葬課はその性質上、葬式をあげられるのはごくわずかだ。
その為回収できた遺体は火葬してとある指定された共同墓地に納骨されている。
その場所を知っているのは長だけで、毎日必ず線香をあげ、時間がある時には掃除をしているらしい。
「まぁ、そんなところだ」
「あたしにも教えてくれれば掃除くらいするさ」
「いいんだ。これは、俺の役割だ。失礼する」
「……あぁ」
歩き去る長の後姿を見送り、ふと花は疑問に思う。
「……あんなに買う必要があるのかねぇ?」
「ただいま」
「おかえり。待ちくたびれたぞ!!」
「お前のせいだ」
そう言って線香を3本取り出し、火をつけて線香器に立てた。
嗅ぎなれた煙が細く立ち上がると、撻器は満足そうに笑う。
「いやぁ、美味いな」
「本当に幽霊は線香の煙を食べるんだな」
「まぁな。食べ物の香りも同じようなものだが、長の食べ物を俺も食べる気にはならん」
「半熟バロットの美味さを知らないとは終わっているな」
「まぁ、確かに俺は死んで終わっているな」
そんな軽口を叩きあいながら冷蔵庫を開け、卵を何個か取り出す。
他にも食材や調味料はあるが全く使った形跡がない。
鍋に卵を入れてから隠れる程度に水を入れ、コンロの上に置いて火をつけた。
「今はIHヒーターがあるっていうのに」
「半熟を作るのには火を見て調整したいんだ。IHは信用ならん」
「ぐはぁ!!変な所で細かい男だな」
「勝手に言っていろ」
塩を少しだけ入れて鍋の前に立ち様子を見ている。
しばらくしてザルにあけて冷水をかけると、皿の上に乗せた。
「おいおい……こっちで食べる気じゃないだろうな?」
「ダイニングがあるのにリビングで食べる必要はないだろう。お前もうるさいからな」
ダイニングにある小さな1人用テーブルでバロットを食べていると、撻器は暇なのか
「まだ食べ終わらないのか~?」
と、ドア越しで聞いてきた。
黙って線香の煙食べていろ、と一蹴するとまだ大量にあるバロットを黙々と食べていた。
「しかし食事をした事によってここまで変わるとはな。協力感謝する」
「お前のせいで無駄な出費が増えた。さっさと回復して出てけ」
「ぐはっ、長い間一緒にいるって言うのに、どうしてそんなに距離をとるんだ?」
「回復したら出ていくと言った男とどうして親交を深める必要がある?」
「何だ、寂しいのか?」
「は?」
何を言い出すんだ、と顔をしかめれば、撻器は得意げに笑う。
「俺と仲良くなったら、俺がいなくなった時に寂しくなるからそう突っぱねているんだろ?」
「……どこをどうすればそうなるのか、お前の思考回路が不思議で仕方がない」
「的中しているくせに。安心しろ。確かに色々周りにはいくが、最後にはまた戻ってきてやるさ」
「その時はお前の息子でも誰でもいいから代金を返してもらうからな」
「伝えられたらな。今のところ、お前しか見える奴はいないからその時は俺の通訳を頼む」
「……本当はお前が寂しいから唯一見えている俺と親交を深めたいだけじゃないのか?」
「……」
「図星か」
黙りこくった撻器に何か言ってやろうと思ったが、やめた。
あながちあいつの考えも間違っていないのかもしれないな、と無駄に買いすぎた線香の入った袋を見ていた。
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