柚の樹と螢
柚の樹と螢
pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場
不定期に増えます
よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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「長の手は冷たいな」
勝手に人の手を握って早々に撻器が言い出した。
しっかりと指をからめて握られている男同士の手はひどく不格好だ。
「そう言うお前の手は温かいな」
「血の巡りがいいからな」
「子供体温って事か」
「子供ではない!!少なくとも長よりは年上だ」
「精神が子供じみているだろ」
ブツブツ文句を言ってくるが、その間もずっと手は握られたままだ。
今は人がいないが、いつ誰が来るか分からない廊下でこのままいるのは嫌だ。
「いい加減に離せ」
「嫌だ」
「怒るぞ?」
「今は温めてやっているんだ。少し待っていろ」
そう言われれば、確かに撻器の手と大した温度差は無くなってきたような気はする。
それとこうやって人と手を握ったのは何年振りだろうか。
「ほら、あったかくなっただろ?」
そう言った撻器は笑っていた。
それから撻器は何回も手を握ってくるようになった。
人目があるところでは堂々とはやらなかったが、秘密ごとのように陰に隠れて手を握られるのは、まぁ悪くはなかった。
「長の手はいつも冷たいな」
「別に不便は感じていない」
「俺が温めているからだろうな。どうだ、嬉しいか?」
「お前が喜んでいるだけだろ」
「ぐはぁ!!半分正解だ。でも、やっぱり長も喜んでいる」
「何故そんな事を?」
「手を握っている時に少し嬉しそうな顔をしているからな」
「……」
「お、図星?図星なのか?」
「先に行っているぞ」
「あ、おい待て!!」
いつしか会えば必ず手を握られた。
その度に私の手は冷たくて、あいつの手は温かかった。
そして段々と撻器の体温と同じになるのは、心地よかった。
初めて、私から撻器の手を握った。
どんな反応をするのかと思ったが、反応はない。
当たり前の事だが、少しがっかりした。
「お前の手、冷たいな」
節くれだった手には縫合痕が残っていて首筋にもそれがあった。
お屋形様とやらが失踪してくれたお陰で、出棺前に撻器と2人きりにしてもらえる時間を何とか作れた。
最期の最期まで、こいつらしく華々しく散った。
「血の巡りが良すぎたせいで失血死か?笑えない冗談だな」
いつだか前にそんな事を言っていた気がするが、初めて手を握られた時だったか。
答えなんて返ってくるわけがないし、撻器の手に体温が戻るわけでもない。
その後はただ黙って手を握り続けた。
そろそろ時間です、と声をかけられその手を離した。
運ばれていったあいつがどこに行くのかは知らない。
「おい、私の手を温めると言ったじゃないか」
いつまで経っても、私の手は冷たいままだった。
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