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柚の樹と螢

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pixivに載せていた嘘/喰/い同人二次創作作品置き場 不定期に増えます よくツイッターで呟いていた妄想を書いております
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10月5日が目蒲さんの日で枸杞に関しての花言葉を聞いて書いてみようかなぁ、と思いまして書いてみました。



拍手[5回]



暗い畦道 小さな花 乾いた風 ざわざわと揺れる木々
息苦しさがあったあの迷宮ではなく、見た事もないどこかへ続いている道

「……あぁ」

そうか、死んだのか

門倉は自身の身に起きている状況を冷静に考え、静かにため息を吐く。
しかし何時かこうなることも分かっていたと思えば別段気にもならない。
それに

「メカもこの道を通ったのかのぉ……」

自分より先に死んでしまった親友も通っただろうな、と思いながら歩き出す。
畦道を歩くのはいつ振りだろうか、などと考えながら先へと進んでいくと、小さな丸い光が1つ。
少しばかり揺れているそれは人魂か、と思いながら近づけば、それは提灯だった。
提灯の光により照らされているのは白い死装束を着た男。
首には青黒い縄状の痣が残っており、狐の面に隠されたその顔は見えないが、金色の髪はどこか見覚えがあるその髪で

「こっちだよ」

やはり聞き覚えのあるその声は、門倉に背を向けると畦道を歩き出した。



「お前はメカ、なのか?」
「……」

しばらく歩いた頃、黙ったまま案内する男に門倉は声をかける。
返事はない。

「メカ、返事くらいせんか」
「話かけないで。それと言い忘れたけど、あまり後ろも振り返らないようにして」
「後ろを振り向くな、って……何にもないじゃろ」

振り返ろうとした門倉を男は制す。

「後ろは黄泉の道。死にたければ振り向いていればいい」
「じゃぁ、俺達が歩いているのは元の世界……なのか?」
「そう」
「なら、メカも生き返れるのか?」
「……」
「メカ、「俺は目蒲じゃないよ」

男は静かに、はっきりと答える。

「なら、何で俺を案内する?知り合いでもない男をわざわざ案内する必要なんてないじゃろ?なぁ、メカ」
「……」
「案内してくれるって事は、お前も生き返る事ができるんじゃろ?」

男が急に立ち止まった。

「門っち」

懐かしい呼び方をした男は、一度だけ面を外した。
青白い肌の男は懐かしい顔で

「ここから先は、門っちだけで行くんだ」
「は?何で、メカも行くんじゃ……」
「行けるのは門っちだけだ」

はっきりと目蒲が言う。
また面をかぶってしまったせいで、その顔は泣きそうなのか怒っているのか、それとも笑っているのか見当がつかない。

「俺の事はもういいからさ。門っちが向こうに戻れなくなっちゃうよ。ほら、早くこれを食べて」

そう言って差し出した彼の手には小さな紫の花と、小さな赤い木の実。

「……枸杞か?」
「あっちの世界ではただの木の実だけど、こっちの世界ではさ、これを食べると延命不老になるんだって」

だからさっさと食べて戻りなよ、と目蒲は差し出した。

「ならメカも食えば」
「俺はもう駄目なんだよ」

首の痣を撫でれば、いつのまにか縄が巻かれ、それは歩いてきた道へとのびている。

「俺は向こうに戻らないと。ほら、早く」
「……どうしようも、できないんか?」
「できないよ」

はっきりと答えると、門倉の口に枸杞の実を押し付ける。
少し酸っぱくて苦いそれを飲み込むのを確認すると、提灯を渡した。

「後ろは振り向かないで。それと……」

目蒲が門倉の左目へ手を伸ばす。
そのままズルリ、と眼球をえぐる。
痛みが無いが、左の視界が消えてしまった。

「これは代償としてもらっておくよ。……それと、最後に頼む。俺の事は忘れて」
「忘れるわけないじゃろ。親友の事を」
「忘れてほしいんだ。立会人としての道を外して、こんな無様な姿になった俺の事はさ。親友なら最後のお願い位聞いてよ」

親友からの願いに、門倉は何も答えられなかった。


風が強くなったのか、木々の揺れが大きくなる。

「ここももう危ないよ。さぁ、早く」

真っ直ぐ進むだけだ、と門倉の背中を押した。
数歩だけ前に進み、門倉は答える。

「忘れないからな」
「……」
「何があっても、絶対に忘れない。忘れてたまるか」
「……酷いね門っちは。親友のお願い聞いてくれないなんて」
「親友を忘れろって言っているお前の方が酷いじゃろ。……またな」

門倉は歩き出す。
目蒲はその背中を見送る。

「俺も戻らないとね」

ずいぶん無理をした、と首を絞める縄を撫でると、道端に咲いている枸杞の花を摘み取った。
瞬時に枯れたそれを見て苦笑いを面の下で浮かべると、来た道を引き返す。

「枸杞の花言葉は《お互い忘れよう》……なるほど、確かに酷いや」

俺も門っちの事忘れられるわけないもんね、と小さく呟いた。
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撻器さんと長の組み合わせが大好物な腐女子です
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