柚の樹と螢
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「長~。これをやるよ」
ある日、いつものように密葬課に急襲してきた撻器は長にお土産だ!!と言って紙袋を渡した。
目の前で無遠慮なく出してみると、猫の置物に長は表情を変えずに手に取ったままだ。
「急にどうした?」
「長のデスクは殺風景だからな、こういうのがあってもいいだろ!!」
「余計な気遣いだ」
「ぐはぁっ、まぁ1日だけでもいいから置いておいてくれ」
「……まぁ、貰っておく」
そう言ってパソコンのそばに置かれた猫の置物が、あまりにも不釣り合いだなと撻器は笑った。
数日後、何となく遊びに来た撻器は、いつものように長のデスクに向かう。
賭郎の立会人である撻器がいるのにも関わらず黙って見過ごすあたり、もう暗黙の了解になっている。
「長~、遊びに来てやっ……た……」
デスクの上に置いてあるものを見て、撻器は固まった。
まだ、あの猫の置物がある。
「またお前か。私達は忙しいから帰れ」
「え?いや、その。まだあれを置いていてくれたのか?」
「あれ?……あぁ」
猫の置物を一瞥すると
「置物なら飾っておくべきだろう?」
「まぁ、そうだけど……まだ置いていたのか」
「お前が渡しておいて何だその物言いは?」
と、興味なさそうに言った。
今度は1ヶ月後。
もういい加減置いていないだろう、あいつには似合っていないしと失礼な事を思いながら密葬課のドアを無遠慮なく開ける。
期間は空いたものの「また来やがった」と言いたげな視線で出迎えられ、撻器は長の姿を捜すが、ない。
「長はどうした?」
「仕事だよ。あんたと違ってあの人は忙しいんだ」
ぶっきらぼうに花が答えると、仕方がないと椅子に座って待つことにした。
そして
「……!?」
未だに鎮座する置物に思わず目を見開いた。
しかもなぜか埃1つ付いていない。
置物だから、とただ置いているだけだと思っていたが、意外過ぎる。
(もしかしてあいつ……かわいいもの好きだったのか!?)
「私の椅子になぜ座っている」
「うぉ!?」
いつの間にか帰ってきていた長に驚き、座ったまま置物を指差す。
「またそれがどうした?」
「お前……かわいいもの好きだったのか?」
「別に。動物は興味はない」
「じゃぁ、何でこれ置いてあるんだ?お前の趣味とは違うんだろ?」
自分なら数日は置いておいてその後は物置行き、だろうと思いながら聞いた。
長は不思議そうな顔をして
「貰い物でしかも置物なら、飾っておくだろう?」
と逆に聞いた。
本当なら敵対している組織のしかも嫌っている人物からの土産と押し付けられた置物なのに、大切に飾っていてくれている。
「……長、お前って奴は意外といい奴なんだな」
「?」
睡眠薬 << | HOME | >> 目は口ほどに物を言う? |